星の輝く中に歌われた鎮魂歌

 2章「人が望んだもの」




「ま、難しい話しはこれまでにして……。」
 ディアッカがそう口を挟んだ。
 確かにこれ以上こういう話しをしても仕方ないとも思う。
 ほぼ初対面に近い人間にこんな話しをしている俺もどうかと思うぞ……。



 ……それとも父のことで自分が少しナーバスになっているのかもしれないな。

 自分でも父のことが絡むとあまり普通の俺じゃなくなるからな。

 …普通の俺がどういうものかは分からないが、冷静さを失うのは確かだ。

 最近は少し神経質だから気をつけた方がいいのかもしれない。

「……悪いな。」
「…何が?」
 シホは何が悪いのかはっきり分かっていないようだった。

 …その方がありがたいのだが。





 …そして、シホはうどんに添えてあった漬物を噛みながらのん気な顔になった。
 俺もうどんをまたすすり始めた。
「ずずず〜〜〜〜〜〜。」
「ずず〜〜〜〜〜〜。」
「……………………。」
「…………………。」
「そういえば、アスラン。」
「なんだ?ディアッカ。」
「どうしてプラントに来たんだっけ?」
 ディアッカは当たり前の表情で聞いてきた。
 オーブに亡命した俺がプラントに来るというのは確かに理由がないといけないような気もする。
 ディアッカの質問は普通の人間ならば当然思う質問だろう。
「両親を偲ぶために来たんだ。」
 俺は普通の表情で言った。あまりこの辺を深く話しをしても仕方ないと思ったからだ。
「ふ〜〜〜〜ん。」
「それはいいことね。両親を偲ぶことは貴方の人生においても必要なことだと思うわ。」
 シホは穏やかな笑顔で言った。
 俺の言葉の中でその根底にあるものを読み取ったのであろうか。

 俺の両親に対する思い……そしてその背後にある「戦争」を………。





「そうなのか?」
 ディアッカは何にも分からずにそう答えた。

 ……………ディアッカが鳥頭に見える。

 実際頭もそんな感じだしな。

 大体なんで無意味に髪を立たせているんだ?

「さあ………どう考えているかは私には分からないけどね。」
 シホはうどんの汁を静かにすすり始めた。
 やはりその表情は少し穏やかになったように思えた。
「まあ、せっかくプラントに来たんだ。ゆっくりしていってくれよ。いざとなったら、俺の家に泊まってくれればいいからさ。」
「もし、そういうことになったら遠慮なく頼む。よろしくな。」
「おう。」
 ディアッカは笑いながら答えた。

 ……ディアッカはこういう部分ではとてもいい奴だ。

 気さくで隔たりなく素直に接してくれる。



 前回の戦争で一番一緒にいた奴…と聞かれれば、ディアッカと答えるような気がする。

 ザフトでずっと一緒にいて、その後、どちらにも属さない中立勢力としても一緒に戦った。

 ひょっとしたら一番の戦友といっていい関係だ。





「…………そういえば、ディアッカは最近はどうしているんだ?」
 見たところディアッカは軍人になっているようだ。
 そうだと断定はできないが、軍人のシホに会っている辺り、そのように見えた。
「俺?再びイザークと一緒になることになった。」
「イザークと一緒?」
「ああ。なんと、ジュール隊が再び結成されることになったんだぜ。」
「ジュール隊が?ということは……またあいつは軍人になったのか……。」
 イザークは俺のザフト時代の戦友だ。
 かなりいがみ合っていたが、今では親友とも言える関係になっている。



 ……なんていうのはウソで今でもイザークに会ったら何か言われること間違いなしだ。

 イザークを一言で言うと、おかっぱ頭のマザコンだな。





 ガゴン!!!!!!





「……何だ?後ろから凄い衝撃がやってきたぞ……。」
「後ろって壁だぜ?何言っているんだよ。」
「………う〜〜〜ん。」
 気を取り直して、彼の説明だ。
 今度は真面目に行こう。



 イザークというのは、昔俺と一緒にザフトの軍人として一緒にプラントを守るために戦っていた仲間だ。
 血気が盛んで猪突猛進な性格なんだが、義理人情に厚い男で相当人間味がある人間だな。

 言葉がキツイから誤解されやすい人間なんだが、一番仲間意識があった奴じゃないのかな……。
 付き合ってみると、一番味のある人間だ。

 彼は彼で軍事法廷にかけられていたのだが……。
 それでも軍人をするというのは……やはり軍人に平和の道を模索しているのかもしれないな……。



 ちなみに何の軍事裁判にかけられていたかというと、プラント連合の戦争であった話しなんだが…。
 俺たちはアークエンジェルという戦艦を追っかけまわしていた。
 それでアークエンジェルが大気圏投入を図ろうというときに、イザークが民間人のシャトルを撃墜してしまったという罪なんだよな。

 まあ、血気の盛んなイザークらしい罪なんだが……。

 普通から考えると、民間人の虐殺に近い行為は死刑なんだが……。

 誰かがテコ入れしたのかもしれんな。





「……そうか。イザークはまた軍人になったのか。」
「そうなんだよ。」
「私が副隊長でね。」
 シホはかかさず言葉を挟んだ。

 ……なるほど。

 だから、ディアッカが迎えに来たのだともわかった。

 恐らく南アメリカの戦争が終わった後、こちらの部隊に再び配属されることになったのだろう。

「愛しのジュール隊長に会えるな?シホ。」
「?」





 バキ!!!!!!




「ぐお!!!」

 ……………ディアッカの座っていたイスが吹き飛んでいったぞ。

 ディアッカが床でもだえているな。

 まあディアッカなんだから、3秒で治るがな。





 ……愛しのジュール隊長ね……。

 あんな奴に好かれる奴がいたとは知らなかったぞ。

 というか違和感ありまくりだ。

 イメージができない。

「………イザークからお守りとかは貰ったのか?」
 俺は少し笑みを浮かべてシホをからかってみた。
 シホ予想外にいいリアクションをしてくれた。
「それはもう!ジュール隊長から前回の戦争の時にお守りを貰ってそれを肌身離さず…………。」
 イスから立ち上がって熱弁を振るったと思ったら、今度は赤面した。










 ………と思ったらイスが飛んできた。





 俺はそれを避けた。





 がシャーーーーーーーーーーン!!!!!










 ……そしてうどん屋の入り口は崩壊した。









「…………………。」
「…………………。」





 ………どうする次回。



                                               (続く)



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