星の輝く中に歌われた鎮魂歌

 2章「人が望んだもの」




「ふ〜〜〜食った食った。」
「………………。」
 俺たちはうどん屋を出た。
 外は、空港近くの繁華街ということもあって、非常ににぎやかになっている。
 道路では車が行き交い、歩道では人が行き交っていた。
 周りには多くのビルが乱立していた。

 非常に賑やかとした場所である。



 シホを見ると、彼女は非常に満足そうな顔をしていた。

 1年ぶりに故郷の味を食べたのだからだろうか、顔は非常に安らかだ。

 故郷にもどって特有の食事を食べてプラントの光景を見れば、やはりそれは他には変えがたい幸福感があるのだと感じた。



 後ろで束ねてある長い黒髪をなびかせながら、シホは満足そうな表情でプラントの空を眺めていた。
 ……空と言っても、地球のような太陽があるわけではないから、いい光景とはいえないんだがな。



 それでも、そうやってプラントの光景を鑑みるシホの姿はプラントを愛する人間そのものだと思った。





 …………一方、傍らにいる鳥頭は絶望の表情だ。



「……で!!なんで俺が修理料金払わないといけないんだ!!」
 ディアッカがとても憤慨した表情でシホに問い詰めている。
 まあ、うどん屋入り口の弁償料金全部払ったんだから、怒るのも当然と言えば当然か。
「別に家が金持ちなんだからいいじゃない。」
 シホはディアッカの表情えを物ともせず、言い返している。
 どうやら二人の間には上下関係というのはないのは分かる。
 それにしても、シホはおとなしい清楚なイメージがあるが結構強気な性格だと言うことが分かる。
「俺は全然関係ないだけどなあ???後で返してくれよ!!??」
「覚えていたらね。」



 ……どうして、ディアッカが払う羽目になったかと言うとだ……。

 俺とシホは外から戻ってきた人間なので金がない。

 言ってみれば、そこまでの金を持っていない。





 そこで登場したのがディアッカ。

 家は政治家のお金持ちと来たもんだから、これを利用しない手はない。

 ディアッカは家が金持ちだしカードもあった。





 ………結果的に払ったのはディアッカだったというわけだ。










「そういえば、アスランはこれからどうするの?」
 シホはこちらを向いて話題転換をした。

 ………後ろで怒っている鳥頭が見えるがとりあえず話しの進行上無視しよう。

「俺はアイリーン氏のところに行こうと思う。」
「アイリーンってアイリーン・カナーバのことか?」
「……ああ。」
 アイリーン・カナーバは俺の父…パトリックが死んだ後に臨時だが最高評議会議長になった人間だ。
 ここに来る前にアイリーン氏に電話したところ喜んできてくれるよう言ってくれた。
 そのため、俺はまずそこに行くことに決めた。

 父上のことを色々知っていると思ったからだ。



「………なるほど。それはいいことだと思う。」
 シホは静かな笑みで俺に向けて言った。
 シホが顔を動かすたびに、後ろで括ってある黒髪がなびいているのが見えた。
 他の一切の混じりけの無い真っ黒な髪の毛だ。
「シホたちも来るか?」
 俺は何気に聞いてみた。
 ここで仲良くなったというのもあるが、シホやディアッカたちも一緒にいるとそれだけで気分が楽になるかもしれない。
 いや、恐らく彼らのような友達といることも重要だし、彼らなら俺のこともちゃんと理解してくれると思ったからだ。
「私が?………う〜〜〜〜ん。」
 シホは素っ頓狂な顔をして驚いたと思ったら暫く考えた。
 そして、顔が動くたびに髪はなびいていた。
「………そうしたいのも山々なんだけど………。」
「………………」
「私はジュール隊結成の会議があるから来れないのよ。」
 そういえば、シホはジュール隊の副隊長だと言っていた。
 それなりに立場上忙しいだろうし、それを無理して言っても仕方ない。
 それでも考えていたということはそれを休んででも行きたかったという意味の表れなのか、非常に残念そうな顔をしていた。
「いや…その気持ちだけで十分だ。」
 シホの気持ちはそれだけで十分通用していた。
 今日一日会っただけだが、その関係は非常に暖かくなったような気がした。
 どうしてかは分からないが、よくここまで仲良くなったとは思った。
「そう…………。まあ、ここにいる鳥頭はついて来てくれるから心配しないでいいわよ」
「へ?」
 シホはディアッカの肩をポンと叩いて、ディアッカが驚いていた。
「………何の話だ?」
 ディアッカはシホにまた無理難題言われるんじゃないかと心配してそうな表情だ。

 何か弱みを握られているのか。ディアッカ?





「アスランと一緒にアイリーン氏の所に行くという話しよ。」
「ああ、別にそれぐらい付き合ってやるよ。」
 シホはいきなりディアッカにそう言ったのだが、ディアッカは普通に了承した。
 ここでディアッカたちと会えてよかったと思った。
 こうして一緒に来てくれるやつがいてくれることは俺としては心休まることだ。
 寂しいというわけではないのだが、誰かいると心強いというのがある。
「アイリーン氏の所に行くんだな?」
 ディアッカは俺の方を向いて、少し笑みを浮かべて言った。
 その言い方は、友達とどこか遊びに行くような気軽さがあった。
 その言い方が俺の心の重みみたいなものをかるくしてくれているような気がした。
「ああ。」
「そっか。お前も大変だな。」
 俺がアイリーン氏の下へ行くという言うことがどういうことかはなんとなく分かっているという表情の顔をディアッカはした。

 それもそうか。

 ディアッカの父親も政治家で戦後色々あっただろうに。
 だから、他人事ではないとディアッカも感じているのかもしれない。

「すまないな。ディアッカ。」
「いいや。」
「さ〜〜〜〜〜て、私は行くわ。」
 シホは思いっきり手を伸ばして、空を見上げた。

 …………空と言っても、無骨なガラス張りとそこから映し出される漆黒空間の光景。

 それが故郷の空であり、俺の故郷なんだ。



 シホが手を伸ばすと同時に黒髪もなびいていた。
 長いだけあって、細かな動作でよく髪はなびいていた。
「ありがとう。シホ。」
「私何かしたかしら?」
「………そうだな。」
「また、会うときがあったらいいわね。」
「ああ。」





「よし、行くぞ。アスラン。」
「………ああ。」

 ……仲間はいる。

 故郷を捨てた俺でもここで迎えてくれる人間がいてくれる。



 それは……人は行くていく上で人のつながりが大切なんだとそれを証明した日でもあるように思えた。



                                               (続く)



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