星の輝く中に歌われた鎮魂歌

 2章「人が望んだもの」




 俺とディアッカは閑静な住宅街を歩いていた。
 あの後俺たちはシホとわかれ、今はディアッカのこの閑散とした住宅に囲まれた場所にいた。
 多くの人がそこで住んでいて、それぞれがそれぞれの目的をもって行動をしている姿が見受けられた。

 ………一人一人の人間の思いがつみこまれた住宅。

 ……そして、一家での団欒などのために作られた庭。

 ……子どもたちが道路で無邪気に遊んでいて、母親はその側で見守っていた。

 ………そして少し中空を見ると、人工的に作った山が見えた。

「………そういえば、ディアッカは大丈夫なのか。用事とかないのか?」
 俺はディアッカに聞いてみた。
 ディアッカとて軍人の戻るのであれば、それなりに忙しいこともあるだろう。
 もしその中無理してきてくれているのであれば、申し訳ないと思い聞いてみた。
「今は基本的に暇なんだよ。ジュール隊に配属される前で休暇中なんだ。」
「………そうか。」
「だから、こうやって暇つぶしできんのは嬉しいことなんだぜ。」
 そうは言っても、訓練とか色々することはあるだろう……と思ったのだが、ディアッカがそう言うのであれば俺は口を挟まないことにした。
 ……もっとも、サボりの口実を作っているのかもしれないが。
「……そう言ってくれると助かる。」





 ……再び、周りの景色を見た。
 変わらず、子どもたちが元気一杯遊んでいて、その光景を母親らしき人物が幸せそうに眺めていた。
 景色は安寧そのもので静かで美しく見えた。

 俺たちはこの景色を守るためにザフトに所属して戦っていたのだろうなと思った。

 プラントで平和に生きていたものたちを守るためにここまで敵といえるものたちと戦ってきたのだ。
 そう感じさせるほほえましい光景だった。
「いいよなあ………。平和って。」
 ディアッカは子どもたちが遊んでいる光景を見て、ぼそりと言った。
 その表情は満足そうというか、平和を享受した人間が見せる情愛に満ちた笑顔のように見えた。
 ほがらかで、安らかな笑顔だった。
「そうだな。」
「今までは何にも思わなかったけどさあ……やはりこういう光景を守るために軍人やってんだなあ……って思うぜ。」
「………ああ。」

 そうだ。

 今はまだ平和だ。

 世界情勢は緊迫とは言えるが、まだ戦争が始まったわけではない。

 この光景を守るためにプラントはプラントで頑張っているのだろうし、ディアッカも頑張っているのだろう。





 ………方法が正しいのかどうかは分からないがな。





 この無邪気に子どもが遊びそれを見守る母の光景を見て、俺は平和ということを噛み締めていた。





 ………………………………。





 …………………。





 ……………。





「ついたな」
「そうだな。」
 閑静な住宅街が一際大きな屋敷がある。
 アイリーン氏が住んでいる家だ。
 中々なただ住まいだと思う……いや、違うな。
 一般人が見れば、明らかにゴージャスな家だろうと答えるような豪邸だと思ってくれていいぞ。



 ……政治家の住む家はやはり豪華と相場が決まっているのだろうか?

 確かに今にも崩れそうな邸宅のボロ屋敷だったら品性が問われるが。
 品性も意識して、自分の住む家を豪華に少なくとも見せようとしているのかもしれない。
 それが信用ある政治家としての条件の一つなのかもしれないな。

 ………なんで、人の家にここまでの感想を述べないといけないんだ。

「でかい家だな。」
「政治家一般の家はそういえるのかもしれないな。」
「ああ、確かにな。俺の家もでかいし。」
「さて、さっさと押そうぜ。」
「?そうだな。」





 どごん!!!!





 俺はディアッカに体当たりをした。

 ディアッカは無様にも倒れこんだ。

「何やっているんだ!!??アスラン。」
「ディアッカを押した。」
「押すのはインターホンだ!!!!」
「ああ、そうか。」
「お前性格変わったなあ………。」



 ………何やっているんだろうな。俺。



                                               (続く)



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