星の輝く中に歌われた鎮魂歌

 2章「人が望んだもの」




 ………写真を見た瞬間はそこまでの感情の起伏が起こるわけではなかった。





 それは当たり前だ。

 何かことが起こったからといってそれをすぐに認識できるほど人間というのはできた存在ではない。

 それは誰にしたっておなじことだと思う。




 ………それは俺も同じことだ。















 写真を見た。



 それで俺の人生が変わるわけでもない。

 何か心境が変わるというわけでもない。




























 …………ただ……なんて言うのだろうな。



 心に穴がすっぽり開いた感じなんだ。

 これをむなしい……悲しいと呼ぶのだろうか。
























 ディアッカは言う。

 悲しいのなら泣けばいいと。




 俺は泣けれない。

 別に悲しくないという訳じゃないんだ。

 後悔とか自責の念がないとかそういうわけでもないんだ。




 ただ………それを認識するだけの実感が湧かないんだ。






 確かに色々考えることはある。


 ……だが、今は呆然とするしかないというのが感想だ。

 悲しいとか…後悔とか……そういうのは後から生まれるのだな……そう思った。
























「今日は休む?」



 アイリーン氏は不意に聞いてきた。

 その表情は柔らかで同情するような表情だった。



 それは当然なのかもしれない。







 俺の心を揺さぶるようなものがこの箱に詰まれていたんだ。

 それは俺がこれを見て、どう思うかを知っていてそういったんだろうな。

 じゃなきゃあ、俺にこんな写真を直接渡さないだろう……・







「ここで泊まってよいのであれば………。」

「そう。遠慮はしなくていいわ。」






 アイリーン氏が信頼できることはここにあるといっていいのかもしれない。

 それは礼節や礼儀といったものを重んじるところにあるのかもしれない。

 コーディネーターという人種はナチュラルを見下している人間も少なからずいる。

 そうした人間が多いんなかでは、彼女はとても「人間の価値」を見る人間だと思う。

 人間の価値とは身体能力ではなく、心の寛容さだとかゆとりといったものだ。

 そうしたものを自分でも重んじて、そして、それを他人にも勧めているのだろうということは分かる。






 そうしたことを考慮に入れて、彼女は信頼できる人間だと俺は思っている。


 ザラ派・穏健派問わずにそう思う。










「…………そうですね。良かったら。」

 俺はなんとなく了承のことを言う。

 泊まる場所がない人間にとってはこれはありがたいことだ。





 今日一日どこで路頭に迷うのかという人間にとってはこれぼど重要なことでああるだろう。















「それは良かった。一人でも寂しいからね。ここの屋敷は。」


「そうか。それは良かった。」


「大丈夫なのか?アスラン」






 ディアッカは単純に俺のことを心配してきた。

 どういう意図かは分からないが、本当に純粋に心配しているということが分かる。














「……それは大丈夫だ」

「すまないな。」




「別にいいさ」

 ディアッカも変わらず減らず口を言っているが、その奥底には友情だとかそういう根底にある。


 ただ器用じゃない分、人より損をしているかもしれないがそこがディアッカのいいところである。





 勿論、ディアッカが暇人というのが前提だ。





















 プラントに来ての初日。

 色々あるものだな思う。


 ……結局、人間の生き方というのは丹念に一生懸命作ったというのがある。




                                               (続く)



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