星の輝く中に歌われた鎮魂歌

 2章「人が望んだもの」




「しかし、なんだかそれは責任転嫁みたいでいやですね……。」



 プラントによって作り出されている人工的な夜を背景に俺は自分の気持ちを言った。

 確かに、パトリック・ザラを輩出したのは愛による憎しみの連鎖によってもたらされたものにしても。

 それのせいにして、すがすがしく生きることは出来ないような気がした。





 アイリーン氏は少し苦笑いをして俺に言う。

 反論したから苦笑いになったのか、俺を慰めるためにそうなったのかの判別はつかないが。

「……そうね。そうかもしれないわね。けど………。」

 アイリーン氏は上を見上げて少し考え始めた。

 ……恐らく、様々な対応が出来るように考えを張り巡らせているのだろう。

 その辺は流石に政治家たる所以だと思う。

 とてもじゃないが、カガリではこのような芸当は出来ないだろう。

 ……カガリはカガリの個性があるからな。





「そうね。貴方たちはその責任を果たしたじゃない?」

「責任を?」

「どちらの勢力にも属さない三隻同盟として平和に貢献したじゃない?」

「………確かに」


 プラントと地球連合の戦い。

 それはどちらかが滅びるまで戦わなければないない総力戦といえるものだった。

 どちらも戦争…又戦争に傾斜していく状況。

 俺たちはその戦いの様に疑問符を呈し、どちらにも属さない勢力として戦った。

 結果、なんとか戦争は終わらせた。







「あの行為はパトリック・ザラのやった狂気ともいえる行動の責任を取ったと思っていいわ。」

「………そうかもしれませんね。」


 ……何だか、相当言いくるめられているうような気がするが……。


 しかし、考えてみてもアイリーン氏の言うことは正しいような気がする。

 俺は父やった行為という側面で捉えても、その責任を取る行為をやったいえる。

 どちらも属さない勢力で戦ったんだ。

 それは他人から見れば十分責任を取る行為なんだろう。










「………そうはいっても、すぐすがすがしい気持ちにはなりませんが。」


 しかし、いくら理屈をこねても、心はそれについていかないものでなかなか吹っ切れるわけでもなかった。

 なんだか、駄々をこねている子どもみたいなことを言うな。

 俺は。


「ふふ。それは時間が解決するんじゃないかしら。」

「………そうですね。」














「さて……私はもう行こうかしらね。」

 アイリーン氏は立ち上がって、上着を少しはたいていた。





 ……少し、詰め込んだ話しになりすぎたような気がした。

 あれだけの話しをするというのも珍しい気もする。

「申し訳ありません。根詰めた話しをして……。」

「いやいいのよ。気にしなくて。そういう話しをしたくて呼んだというのもあるのだし。」

 アイリーン氏は少し笑みを浮かべていた。

 俺のような奴を呼ぶことに抵抗がないところはアイリーン氏の人格によるものなのだろう。

 それだけの人物だとうことだ。















「それじゃ。また明日ね。」



 ガチャ。








「モビルスーツが歩く音だ!!」

 ディアッカが声高らかに言う。

「そんなわけないだろう……。」

「いや、分かんないぜえ?意外にこういう宙域をうろうろしてたり……」

「はいはい………。」




 ………その後も俺はディアッカと他愛のない話をして、夜がふけたら俺たちは寝た。





 ……………………。








 ………………。










 …………。

























 夜ベット寝ていて思う。


 ……俺は少し父と向き合えることが出来たのではないのだろうか。

 いままで逃げていたようにも取れる俺の行動。

 それから向き合い、俺は父のことを少し詳しく知ることが出来たような気がした。

 そして、これからも……向き合えるようでいたい。




『知れば……寛容になるかもしれません。』


 ラクスはそうようなことを言っていた。

 確かに父のやってきたことを知ることは心が寛容になるような気がした。

 少しだけ、父のやってきたことに対して直面して生きていけるような気がした。












 父さんは不器用ながらも俺のことをいつでも気にかけ……そして愛してくれていた。

 父さんはプラントを守るために頑張った人物でもある。……少しやり方を間違えたが。

 その事実は変わらない。




























 ………目を閉じる。

 広がる暗闇で父の顔が浮かんだ。

 その顔は笑顔のように見えた。








 ……………俺の中で初めて浮かんだ父の笑顔だった。










                                               (2章終わり)



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