アマジのチームZZ録 第一話 できるから呼んだのさ! (ここはどこだ?) 3人の少年が目の前で起きていることを見て、同時に思った。そこには見たこともない者たちが存在している。 しかもその様相は、日本ではまずお目にかかれないであろう神官風の男が複数、目つきが鋭い剣士姿の幼女が一人いて、 建物は吹き抜けになっており、座りながらでも外がよく見えた。 ただそこからは地面ではなく、かなり遠くにあるであろう山並みが見えるので、ここはどうやらそれなりに高い場所だと判断できた。 どこかの塔か何かの場所なのか、幾つかの円柱で支えられている天井にもまるで見覚えの無い奇妙な絵が描かれていた。 エジプトの壁画に書かれているような不思議な絵だった。足元には魔法陣が描かれてある。 明らかに日本人ではない者たち、見たこともない景色、そして魔法陣。 現況から推測して自分の身に何が起きたのか、大よそは理解していたが、剣士の姿をした幼女が発した言葉でそれを確信することになった。 「よく来てくれた、武将になる者…たちよ」 先程まで自分は学校にいたはずだ。放課後の教室に今ここにいる三人がいた。 しかしその時、突然足元から眩い光が迸ほとばしった。三人は、あまりのことに体を驚きのせいで硬直させていた。 目の前が真っ白になり、気づいたら今の状態だったのだ。 周りで神官風の男たちが喜びの声を上げている。 「やったぞ!」、「成功だ!」などと、突然のことで戸惑うこちらの気を無視してはしゃいでいる。 だがその表情にはかなりの疲弊感が見える。マラソンでもしていたのかと思うほど汗を流しているのだ。 そんな彼女も男たちと負けず劣らずに顔を綻ばせていた。恐らく自分たちは、この者たちに召喚よろしく、問答無用で呼びつけられたのだろう。 まさか自分がそんな経験をするとは全員思ってもいないため、自分たちに起こった現象に理解が追いついていない顔をしている。 「ぶ、武将? どういうことですか?」 三人の中では身長も高く爽やかそうな少年が先に口を開いた。 幼女は慌てて頭を下げた。 「あ、申し訳ない! それについては姫様が直々にご説明する! だから私についてきてほしい!」 そう言いながら申し訳無さそうな表情が見える。よく見ると彼女の顔色が悪い。 先程までは笑顔だったのでよく分からなかったが、召喚したことで疲労したのか額にも汗が確認できる。 神官風の男たちと同じである。そんな彼女の様子に三人ともここで長居せずに、とりあえずは従って様子を見ようと思った。 その方が彼女も休めるかもしれないと思ったのだろう。 「分かりました。一応どうなったのかは予想できますが、話を聞かせてもらいます」 こうして三人は剣士の姿をした幼女の先導のもと、姫君がいるという玉座の間へと向かった。 使用人と思われる人物、所々に配置された兵士らしき人物。 髪の毛や瞳の色を見て、やはり日本ではないと改めて認識できた。 先程居た場所は、やはり塔のようであり、大きな城の中に建てられたものだということも理解した。 「よく召喚に応じてくれたことに感謝するよ、あなた達。私はエルピー・プル。よろしくね」 玉座に座っている幼女が穏やかな笑みを浮かべて言葉を発した。 「しかし、突然のことで戸惑いばかりが先行しているでしょ。だけど安心して。今から説明するよ」 自分たちがいるところは国の名はカーン国の都市の一つエルピー市の中心エルピー城。 この大陸には境界線が存在しておりカーン国以外にキャスバル公国、袖付き国が存在する。 ここまで案内してくれた剣士の姿をした幼女は妹であるプルツーである。 カーン国、キャスバル公国、袖付き国今この三国間は、かつてないほどの緊張が生まれているらしい。 何せ3か月前にこれまでカーン国を護っていたといえるプルの重臣トーマス・ラティハーツが袖付き国の女武将によって打ち取られた重大事が起きた。 そのトーマス・ラティハーツの代わりをと考えたプルは古の魔法として封印されていた召喚魔法を使用することになった。 だが封印されていたということは、何かしらの理由がある。それは召喚魔法が、決して万能ではないことを示す。 召喚魔法は多大な魔力を必要とし、また資質が無い者が行えば、行使した魔力が凶器となって身に降りかかってくるのだ。 元来召喚魔法は王家のものしか使えないとされてきた。だが王家の者であれば、誰もが使えるわけでも無かった。 失敗した者は、例外なくその膨大な魔力に当てられ精神を壊し、時には死を呼ぶことも少なくなかった。 これはただの召喚魔法ではない。異世界への扉を開けるという、異端な魔法の一つなのだ。それ相応のリスクは持っている。 プルは迷った。以前はプルトゥエルブとプルナインと自分とプルツーがいたが、自分と今いるプルツーのみ。二人は生死不明なのだ。 このままではカーン国は滅ぶ可能性がある。回避するためには何としても異世界から武将となり得るものを呼ぶ必要があった。 古い文献には、他の二国も過去に異世界から武将を召喚して、国を護ったと書いてあった。 武将は精霊を操る力を有し、普通の人間では考えられないほどの身体能力や魔法を使うことができる。 カーン国の領主プルがしようとしたが、皆が反対した。領主とはいえ、市にとって王みたいなもの。 その王がいなくなれば、国は支えを失いそれこそ他の二国につけ込まれ一瞬のうちに滅ぼされてしまうかもしれない。 その話を理解したプルツーは、自ら市の礎になることに決めた。怖い、怖いが、このままでは全てが消える。 誰かに殺される命なら、自分で望んだ場所で散らそう。そう思い召喚魔法の儀式を行うことにした。 儀式は神官たちの魔力と、プルツーの魔力を媒介にして行われた。 儀式の最中に気が遠くなるのを感じたプルツーは、やはり自分では無理だったのかと思い、諦めた時、魔法陣が見たことも無いほどの光を放つ。 そして、三人の人間が姿を現したのだ。 「自己紹介がまだだったな、オレは神野広(かみの ひろし)」 最初に百八十センチ近くでメッシュをしたイケメンの少年が 「オレは平野和(ひらの あつし)……」 次に、黒髪黒目、身長は百八十近くで、決して筋肉質ではなく、イケメンレベルでは広の次で、唯一チャームポイントは眼鏡をしている少年が 「オレは天野大二(あまの だいじ)」 最後に平野と同じ黒髪黒目だが身長は百六十五と三人の中では低く、もっとも地味な少年が自己紹介をした。 「文献によると、武将は一人だけなのに三人……いる」 そうだ、今回召喚されたのは三人いるのだ。どういうことと近くにいる学者ふうの男性に視線を送る。彼は慌てたように眼鏡をクイッと上げる。 「わ、分かりません! ですが、三人とも武将なのでは……?」 「誰でもできることだけど召喚したてなら他人である私でも調べられるから。風の精霊『キュベレイ』よ、風の力で彼らの称号を示せ!」 プルが唱えると、三人の前にそよ風が吹いた。すると全員の前で称号が現れた。 「オレは武将で他は…」 神野が言った後に続いて平野と天野が言った。 「「巻き込まれた者……」」 「巻き込まれた者……? ブルツー、どういうことか分かるの?」 「ご、ゴメン解らない……」 言い難そうに顔を俯かせる。そのプルツーの様子を見て平野は嘆息たんそくする。そして彼女の代わりに話す。 「オレや天野はただの一般人。たまたまあの時、教室に来てしまったせいで、コイツの巻き添えになった。そういうことだろ?」 「あ……あの……」 平野は無視して続ける。 「本来この世界に呼ばれるべきだった人数はたった一人。オレは言ってみればイレギュラー的存在だ。この始末はどうつけるつもりだ?」 平野は別に敵意や殺意は込めてはいない。ただ淡々と言葉を並べているだけだ。それでも召喚したプルツーの顔が青ざめていく。 「いや、オレだけじゃない。そいつらもこっちの都合で呼び出された。向こうにいる家族はさぞ心配してるだろうな」 増々プルツーは表情を悲痛なものに歪ませていく。 「確かに、そちらの都合を考えず召喚してしまったことには申し開きはしないし、できない」 そうプルが謝罪の言葉を述べる。つい言いわけじみたことを言ってくると思ってはいたが、存外自分たちの犯したことの重大さは認識しているようだ。 「しかし、私達にはもうこれしか方法は無かったのよ!」 「いや、ハッキリ言ってそいつらについてはどうでもいい」 「は?」 平野の言葉に皆が時を止める。 「オレとそこの二人には基本的に何の繋がりも無いとオレは思ってる」 そうだなと天野は言った後で、でも喧嘩腰の態度も程々にしてくれと頼んだ。 「喧嘩腰? 事実を言っただけだが?」 「言い方があるだろ」 「オレは間違ってないから遠慮する必要などない。関係ないやつがオレに指図するな」 平野の言う通り、確かにクラスメイトだが、今まで喋ったことは無かった。話しかけにくいとは感じてはいたが、進んで喋ろうとも思ったことが無かったのも事実だ。 「さて、さっきも言った通り、そっちの二人とはオレは何の関係も無い。アンタたちがほしいのはあいつ一人だけなんだろ? だったらオレはいらないはずだが?」 プルは難しい表情をしながら唸る。どう判断したらいいか迷っているのだ。 「武将っていうんだから、そいつは相手がやたら強い相手でない限り戦えるんだろ? けどオレは一般人だ。まさかオレにもそんな危ない奴らと戦わせるつもりじゃないだろうな?」 「…………なら聞くけど。あなたはどうしたいの?」 「元の世界へは?」 「う、うん。その通りね。それにじゃ、この国も素晴らしいし、きっと気に入ると思う。あなたたちはもう我々の家族と同じようなものだからね」 プル平野は肩を竦すくめる。 「あ、でも平野じゃないけど、向こうに残した家族が心配だな」 神野も同じ心配をしている。 「そ、それについては心配無いようだよ、そうだよね?」 そばにいる学者のような男に話を振る。 「あ、は、はい! じ、実は向こうでは君たちは最初からいなかったことになっているのです!」 「い、いなかったことになっているだって!?」 その言葉はかなり衝撃的だったようだ。 「武将となり得るものの資格の一つとして向こうの世界では次の日死ぬ予定の者と文献で書かれてあります。平野、神野、天野の三名は事故で無くなる予定です」 (まあ、奴らが帰れるかどうかなんてどうでもいいか。オレは……別にどこででも生きていけるしな) 平野和は児童養護施設育ちである。 両親に捨てられたというわけではなく、まだ幼い時に両親が事故に遭い死んでしまったのである。それからは児童養護施設に引き渡され育った。 そこではそれなりに友達もできた。しかしそれ以上に、読書が好きでほぼ毎日様々な本を読み耽ふけっていた。 人間の友達よりも、本が友達と呼ぶに相応しい存在だっただろう。 何も無い天涯孤独というわけではないが、どうしても向こうの世界へ帰らなければならないという理由も無い。 だから別段帰る方法が見つからなくても困りはしないと思った。 プルの説明により、とにかく今は帰る術が無いのは理解できた神野たちは、これからのことについて話し合った。 「確かに、平野の言う通り、あなたたちは俺たちを勝手に呼んだ。それは自分勝手だと思います」 神野にまで言われてさすがのプルも渋い顔をしている。 「でも、困っている人を放っておくわけにもいかないからオレは戦うよ」 神野のその言葉にプルはありがとうと言って頭を下げた。 「でも、オレは初心者だ。今のままでは戦えない」 「神野君、それについては心配いらないよ。戦闘については……」 「ここからは私が説明するから」 そう言いながらプルツーが片膝をつき首こうべを垂れる。 「ちなみにプルツーはこのエルピー軍の第二部隊隊長だよ。今国境は少しの間だけ落ち着いている。また激しくなる前に、あなたには強くなってもらいたい」 「あ、住むところは?」 「それはこの城で用意してあるから。あとでプルツーに案内させるよ」 どうやら話はどんどん進められていって、神野は戦うことに決めたようだ。そこで平野は手を上げる。 「悪いがオレは自由に動かせてもらうぞ?」 その言葉に皆はまたも時を止める。 「いやいや、オレはこの国に恩義も無けりゃ、戦う理由も無い。それにそっちの奴らみたいに武将でもない。故ゆえにこれ以上ここにいる理由が無い」 「む……しかし」 「悪いけど、オレはそっちの奴らのように物分かりがよくない。まあ、せっかくの異世界だ。オレは思うように過ごしたいと思ってるだけだ。別に構わないだろ?」 「またかよ、やめとけよ!」 天野が抗議した。だがプルがそれを無視した。 「う、うん。平野といったね。あなた達に関しては、全面的に謝罪する他ない。何かしてほしいことは」 「無いね」 「な、無いの?」 「ああ。それと、オレは別にアンタらを恨んじゃいない。この世界にも珍しい本とかありそうだし、なかなかに面白そうだ」 平野だって男の子だ。冒険に憧れたことはあるのだ。本に書かれた主人公のような大冒険でなくてもいいから、こんな世界を歩いてみたいと思ったことはあるのだ。 「だからこれ以上ここにはもう用は無いんだ。じゃあな」 そう言って出て行こうとすると、天野が腕を掴んだ。 「おい! さっきから自分は無関係無関係言いやがって!」 「ああ?」 めんどくさそうに声を漏らす。 「巻き込まれたオレが、人質にされる可能性を考えていないのか?」 天野は小声で尋ねた。 「考える? 考えているぞ。そうなる前に逃げればいいだけの事だ」 「ムリだな。その態度で無関係なオレにまで影響が及ぶ。これで二人仲良く監禁されるぞ。そうなったら責任とれるのか?」 「その必要はない。目の前の出来事を見ろ。あの幼女二人はオレの言動を許している」 平野の言葉に反論できない天野だったが、本来ならあれだけ礼儀を無視した言動で監禁か下手すれば死刑になってもおかしくないのに問われないのはどういう事だ? と内心不審に思った。 「それにオレは武将じゃないからな。何か? 大した力も無い人間を弾除たまよけにでも使うつもりか、お前?」 「な……弾除けって……それオレに言うなよ。神野と共に訓練して強くなったり生活のために教えてもらう方法だってあるじゃないか」 「自由に生きていけなくなるから駄目だ」 天野は平野の態度を見て説得は無駄だと判断してつかんでいた腕を放して解放する。 平野は今度こそその場から去って行った。 「考えて……その程度か」 平野の後姿を見て天野はため息をついた。と同時に、巻き込まれた者に関する称号で自分の文字が白くて平野の文字が赤いことに内心疑問をいや、それで何かしら悪いことが起きなければいいがと悪寒を感じた。 「話を戻すけど。天野君、君は3人の中で実力が最も低い。そんな君を守れず死なせるのは心許ない。だから君を冒険者用の訓練施設へ連れて行き、最低限自分の身を守れる程度に教官に鍛えてもらいなさい。それ以降はカーン国にいる限りあなたの自由だ。おい、ゲモン・バジャック」 プルツーが呼ぶと、一人の巨漢が姿を現した。 「お呼びでしょうか、プルツー様」 「ああ。この者を鍛えてやってくれ」 「仰せのままに」 ゲモンはプルツーに頭を少し下げた後、天野に振り向くと、こう宣告した。 「おい、坊主。オレの稽古は厳しいことを最初に言っておく。死にたくなければ必死になって最後までやり通せ!」 そして、天野を連れだした。 「じゃあオレは住むところに行けばいいんだな」 神野が言ったが、 「それは訓練を受ける前に契約した後だ。この城の地下室にいる精霊と契約してほしい」 プルツーに若干遮られた。 「精霊?」 「精霊とは簡単に言うと、武将が特別な力を使うのに必要な力の源で、属性が存在していて、自然を司ったり光や闇、上位には完全や完璧があるの」 プルが説明し、プルツーが今回することについて述べた。 「お前はその上位の完全を司る精霊『パーフェクトガンダム』と契約してほしい」 「で、できるのか、このオレに?」 神野は恐る恐る尋ねた。 「できるから呼んだのさ!」 プルツーは真摯な表情で答えた後、 「私が契約の手順を説明する。先ずは魔法陣に立ち、人差し指をほんの少し刃物で切って血を滴らせる。すると資格者であるお前の目の前に精霊が出てくる。次に「我と契約せよ」と叫び、精霊が承諾したら完了だ」 「わかった」 神野はごくりと唾を飲み込んだ後、プルツーに言われるまま右手の人差し指を刃物でちょっとだけ切ると、ほんの少し魔法陣に滴らせた。すると、魔法陣が光を放ち、巨大な巨人もとい精霊が姿を現した。 「今こそ我神野広(かみの ひろし)と契約せよ、パーフェクトガンダム!」 神野が叫ぶとパーフェクトガンダムは頷き、彼に憑依すると姿を消した。 「これで契約…完了……なんだな」 プルツーが頷いたので、神野は大きなため息をつき、床にへたり込むのだった。 |
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