CONNECT01.『決めていない道、決めた道』


「どうだ、悪くない話ばかりだぞ?」
「はぁ……」
 ある日の放課後、飛鳥は担任教師に呼び出されていた。
 理由は一つ。進路についてである。
「コネクト協会からはもちろんだが、お前ならこの大学に推薦でも行ける」
「大学は流石に……かと言って、協会に入るのは……」
 協会に入れば、間違いなくイジメられる。とある一人の女性に
 かつて、仕事を手伝わされた事を思い出す。あの地獄が毎日となれば死ねるだろう。
 だからと言って、大学は行きたくない。英語の試験が受かるはずもない
「うーん……」
「……まぁ、年末までに決めてくれ」
 流石の担任教師も諦めた。



「進路か……もう、そんな時期なんだよなぁ……」
 あれから――――『ディフェンド・キング』ゴウボーグ=レンダリムとのバトルから約半年。
 気づけば、もう高校3年生になっていて、あと1、2ヶ月ほどで夏休みだ。
「明日香は大学進学だっけ……。勇治の奴は確か――――」
「DPLチーム『千葉グローリー・スター』に入団だ」
「そうそう。DPLに……って、え?」
 後ろを振り返る。サングラスをした男がそこにいた。
「えっと……?」
「初めまして、『ソード・マスター』。俺は門屋徹(かどや とおる)だ」
「門屋……? 門屋って、まさか……?」
「そう、DPLチーム『大阪パラディン』の門屋徹だ」



 飛鳥のはとこであり恋人の明日香は、とある場所に向かっていた。
 飛鳥から「進路の事で遅くなるから頼む」と言うメールが届いたからだ。
「進路……飛鳥君、どうするんだろう?」
 自分は大学進学を考えているが、飛鳥はまだ決めていないと言っていた。
 それを思い出すと、つい思う。一緒の大学に進学して、一緒に勉強したいと。
「一度でも一緒の学校に行きたいな……」
 少しでも長く、一緒にいたい。そんな事を思っているうちに、目的の場所に到着した。
 たくさんの子供達が大人の男性や女性と遊んでいる。保育園だ。
 その中で、一人の少女を見つけ出す。
「美緒ちゃーん、迎えに来たよ」
 そう、明日香が言うと、美緒と呼ばれた少女は笑顔で明日香の元へ走って来た。
「あすかおねーたん!」
「美緒ちゃん、今日は何して遊んだの?」
「えっとね……おままごと!」
「そうなんだ」
 すると、少女――――美緒が何かを探すかのように辺りを見渡す。
「どうしたの?」
「おにーたんは?」
「飛鳥君……お兄ちゃんは今日遅くなるから来れないって」
「えー……」
 落ち込む。明日香は困りながらも、優しく美緒の手を握った。
「今日は私と一緒に帰ろう? ね?」
「うん……」
 今にも泣きそうな感じではあるが、美緒は頷いた。



 ショップに設けられた喫茶店。そこで、飛鳥は門屋徹と名乗る男と話をしていた。
「俺をパラディンに?」
「そうだ。DPLの『大阪パラディン』エースである俺が直々に、お前をスカウトしたい」
 DPL。それは、今から半年前に成立した、ドライヴによるプロリーグの事だ。
 正式名称は『Drive Professional League』。現在は日本のみで、10チームによるバトルが行われる。
 バトル形式は9対9。『ブレイクタワー』と言う巨大な柱があり、敵チームのものを破壊する事で点数が入る。
 そして、制限時間内で得点の高いチームが勝利と言う、シンプルな構造でもある。
「現在『ソード・マスター』のお前なら、間違いなく得点王になれるはずだ」
 得点は、『ブレイクタワー』を破壊した時の距離によって得点が異なり、近ければ近いほど高得点となる。
 なぜなら、コネクターはタワーを守る為、それを突破して破壊する方が難しいからである。
 だから、プロの門屋徹は、飛鳥の実力を買って、得点王などと言葉を発した。
「オーナーも優勝したいもんだから、年収もかなり良い条件を出してくれる約束だ。どうだ?」
「そう言われても……プロになるって言うのは……」
「簡単だろ、プロ試験受けて、EXランクになれば良い話だ」
「いや、そうじゃなく……」
 まだ、自分のやるべき事が残っている。それが終わらないと、進路なんて考える余裕はない。
「すみません、この話は無かった事にして……」
「保留にする。気が変わったら、連絡してくれ」
 そう言って、連絡先を書いたメモを渡し、門屋徹は立ち去る。飛鳥はため息をついた。
 来るとは思っていたが、まさかプロで活躍するエース自らがスカウトするとは思わなかった。
 ドライヴを取り出して時間を確認する。と同時に、一通のメールが入って来た。
『ドライヴ・マスター』からだ。すぐに内容を確認する。
「違法者か……。場所は近いか」
 ドライヴをポケットに入れ、飛鳥は駆け出した。



 とあるショップで行われているバトル。そのバトルで少年と少女は苦戦を強いられていた。
 白と青の装甲で深紅のビームソードを持ったドライヴと深い青の装甲でナギナタを持ったドライヴ。
「くそっ、こいつら!」
「コンビバトルだったのに、いきなり5人に増えるなんて……違法じゃない……!」
「最初から感じていた違和感はこれかよ……! 瑞樹、援護しろ!」
「ちょっと待って、歩!」
「うぉぉぉおおおおおおっ!」
 白と青の装甲のドライヴを操縦する少年――――歩が、敵に向かって突撃する。
 手にしていたビームソードを二刀流する。
「カイザーネイル!」
 振り下ろす。敵は持っている盾で呆気なく防いだ。
『無駄だ、無駄。この盾はお前らじゃ通用しねぇ』
『そーらよ』
 盾を持っているドライヴとは別のドライヴが攻撃し、吹き飛ばす。
『へ、つまらねぇな。やっぱザコ相手じゃ話にならねぇよ』
『レア・ウェポンも持ってねぇみたいだし、とっとと片付けようぜ?』
『だな。女の方はあとでお楽しみもあるしな』
 それぞれが言う。歩は歯を噛み閉めて立ち上がった。
 流石に腹が立った。違法をした相手にザコと呼ばれて。
「ザコって呼ぶな……! 俺はザコなんかじゃない!」
『吠えるなよ、ザコ』
「呼ぶなって言っただろぉぉぉ!」
 再び攻撃を繰り出す。しかし、すぐに防御され、カウンターで大ダメージを負った。
 少女――――瑞樹が「歩!」と叫ぶ。
『終わりだな。こいつで仕留めてやるよ』
 相手がゴッドランチャーを取り出し、構える。――――が、それは放たれる事はなかった。
 遠くから放たれたビームが、違法者のドライヴ3体を一気に破壊する。
 それを見た歩と瑞樹は目を見開いた。
「一撃で3体……!?」
「一体、誰が……!?」
 そして、二人の前に一体のドライヴが現れる。青い装甲に包まれた、誰もが知るドライヴ。
「あれは……蓮杖飛鳥の……!?」
「ああ。久しぶりだな、お前ら。『ダーク・コネクター』から改心したようだし」
「『ソード・マスター』……」
 立ち尽くす二人。そんな二人を後ろに、飛鳥が残った二体のドライヴに剣を向ける。
「そこの二人、違法コネクターとして裁かせてもらう。『ソード・マスター』の裁き、覚悟しろ」
『ソード・マスターだと? チッ、厄介なのが出てきたぞ』
『問題ねぇよ。相手がフォース・コネクターでも、攻撃は通用しねぇ』
 盾を持つドライヴを動かすコネクターが言う。飛鳥は盾を良く見た。
 銀色に輝き、真ん中に女神のレリーフが刻まれた盾。
「……『レア・ウェポン』所持か。それも、ヴァルハラシールドかよ」
『流石はソード・マスター、詳しいじゃねぇか。そうだ、こいつにゃ、どんな攻撃も通用しねぇ』
 ヴァルハラシールド。『レア・ウェポン』と呼ばれるアクティブ・ウェポンの上級の代物で、
 さらには『ディフェンド・キング』の武器アルティメットシールドの次に防御力の高い盾。
 軽く舌打ちしつつ、飛鳥は考える。もう一体のドライヴが突撃してきた。
『先に仕掛けさせてもらうぜ!』
 剣が振り下ろされる。が、そこにセルハーツの姿はなかった。
 瞬時に襲い掛かってきたドライヴの背後に移動し、プラズマセイバーの斬撃を繰り出す。
「ミラージュ・ブレイド!」
 一撃必殺。あっさりと攻撃を回避し、そしてあっさりと敵を倒した。
 それを見ていた歩が目を見開く。自分と戦った時とは比べ物にならない強さを見せた飛鳥を前に。
 ヴァルハラシールドを持つドライヴが背中から無数の砲門を見せる。
『こいつなら避けれねぇはずだ!』
 放たれる無数のレーザー。飛鳥は瞳を鋭くし、『鷹の瞳』を発動させた。
 レーザーの動きを全て見切り、回避しながらゴッドランチャーを構えて撃つ。
 しかし、ヴァルハラシールドが簡単に受け止める。
『ゴッドランチャーが効くわけねぇだろ!』
「だよな。しかし、レガリアは使いたくないしな」
 プラズマセイバーを戻し、腰から柄が回転式シリンダーとなっている剣を取り出す。
「方法はいくらでもあるけど、こいつで決める。イクサ・グレイル、エネルギーリロード・トリプル!」
 剣の柄が回転し、3発の薬莢が排出される。刀身が光り輝いた。
 セルハーツの左腕の内側に装備している”何か”を展開させる。弓だ。
 雷の形をした弧を描く弓。その弓に剣をセットし、狙いを定めて引く。
「特別サービスだ。滅多に見られない大技だぜ」
『大技? どんな技でも、この盾には無駄だ!』
 敵が盾を前へ突き出す。飛鳥はふっと笑った。剣に雷が宿る。
「ライトニング・ストライク!」
 射る。弓から矢として放たれた剣が真っ直ぐ放たれた。
 盾で防御する敵。しかし、盾は呆気なく敗れた。
『何!?』
「『レア・ウェポン』には『レア・ウェポン』だ。俺を甘く見ていたお前らの負けだ」



 バトル終了。飛鳥は自分を待っていたと思われる男女を向かい合った。
「久しぶりだな、『ブラッディ・ファング』に『ゼパール・フラズグズ』」
「……そ、その名で呼ぶな! 俺は……」
「冗談だ。緋月歩に近衛瑞樹、元気だったか?」
 そう、この二人は半年前まで存在していた『ダーク・コネクター』と呼ばれる者達の中でも幹部だった二人。
 飛鳥の質問に、瑞樹が答える。
「はい。お陰で、歩もちゃんとしたコネクターに……」
「そうか。今は、ランクは?」
「私がBで、歩はまだCです」
「BとCか……」
 すると、歩が「悪かったな!」とへそを曲げる。
「俺達はテメェみたいに天才でも何でもないからな!」
「誰もそんな事は思ってない。……強くなりたいか?」
「え……?」
 歩がキョトンとする。飛鳥は話を続けた。
「今、俺はチームを作っている最中なんだ。そのチームに、来ないか?」
「チームって……」
「蓮杖飛鳥の……『ソード・マスター』の作るチームに? 私達を?」
「ああ。どうだ?」
 飛鳥の誘い。歩と瑞樹はお互いの顔を見合わせた。
 実力のない自分達を、なぜか彼はスカウトしている。不思議だった。
 歩が「へっ」と、やはりへそを曲げたまま言う。
「俺達を入れて、自分の強さを自慢したいのかよ?」
「違う。最強のチームの称号を手に入れる」
 飛鳥が話を続ける。
「俺は今度の大会でシングル、コンビ、チーム全ての最強を手に入れる。
 お前達をスカウトするのは、俺と一緒に戦って欲しいからだ」
「テメェと一緒に戦う……?」
「…………」
「まだ何も決まっていないチームだけど、お前達二人に加わって欲しい」
 真剣な瞳。嘘など一切言っていない瞳。飛鳥は本気だった。
 歩と瑞樹が思わず息を呑む。飛鳥は「返事はいつでも良い」と二人のドライヴに番号を送信する。
「気が向いたら、連絡してくれ。待ってるぜ、緋月、近衛」
 その瞳は、「最強を手に入れる」と言う決意を持ったコネクターの瞳だった。



次回予告

 明日香「いよいよ始まりました、『Drive-Connect! - ULTIMATE EPISODE -』!」
 飛鳥 「もう高校3年なのに、まだ卒業後の事を考えていない俺。そして、俺に来る多くの誘い……」
 明日香「えっと、大学の推薦にコネクト協会の特別優遇。あと、DPLとか……色々あるね」
 飛鳥 「全部良い話だから、かなり迷うんだよなぁ……でも、チーム作りが優先だよな」
 明日香「今思ったら、飛鳥君って苦労しないタイプだよね」(← 一応、受験勉強で大変なヒロイン)
 飛鳥 「え?」(←間違いなく苦労せずに進路を決めれる奴)

  次回、CONNECT02.『決意と言う名の襲名』

 飛鳥 「次回は俺のチームが誕生! その名は!」
 明日香「あ、飛鳥君、それは次回のネタバレになるからダメ!」



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