CONNECT17.『明日奈の答え』


 突如現れた明日奈の乗るハデスハーツ。その両手に持つ剣が明日香のシルフィーナディアに襲い掛かる。
『フレイムヴァイパー!』
 炎の剣から鞭状の炎が伸び、放たれる。シルフィーナディアのリアクターウイングが防いだ。
 その防御力の高さに、明日奈の顔が少しだけ歪む。
『……レア・ウェポンによる攻撃を防げるなんて、良い物を作ってもらったわね』
「明日奈、バトルじゃなくて話し合おうよ!」
『黙りなさい! あなたは私から飛鳥を奪い、そして飛鳥を独り占めしている……それが許せないのよ!』
 ハデスハーツが氷の魔剣を振り上げる。
『アイシクルエッジ!』
 振り落とし、氷の刃がいくつも放たれる。明日香は「明日奈!」と叫んだ。
 リアクターウイングの自動迎撃が行われ、氷の刃を撃ち落とす。
 それを見て、静かに明日奈が笑みを浮かべる。
『自動迎撃……強いわね、そのドライヴ』
「明日奈、私の話を聞いて!」
『黙りなさいって言ったはずよ、明日香!』
 ハデスハーツが炎の魔剣を大きく振り落とし、シルフィーナディアの回りに炎を描く。



 同時刻、別のショップにて。『ストーム・クラウン』である彼女――――マリアはついに追い詰めた。
 巧みに雷系の攻撃を繰り出してくる『ダーク・コネクター幹部』と激しいバトルを繰り出す。
「そうやって逃げてないで、攻撃して来なさい、”ヴォルト・デュラハン”!」
『逃げていませんよ。なにせ、あなたは罠に掛かったのですから』
 不敵に笑う。突然、バトル・フィールドに乱入が入った。
 マリアが舌打ちする。「罠って、こう言う事ね」と呟きながら。
 ラフレシアのような形態の巨大ドライヴ。その中心には、エネルギーがかなり集中している。
『さあ、私の大切なお花さん、仕留めなさい』
 ラフレシアの中心に込められたエネルギーが放出される。マリアはドライヴを変形させた。
 女性型であるムササビ丸が竜型へと変形。口内にエネルギーを込め、ラフレシアに対抗する。
 放たれたのは、レガリアである『ワイヴァーン・ウイング』の力を持つワイヴァーン・フレア。
 ラフレシアのエネルギー放出を食い止め、ついでに破壊する。
「罠ってこれだけ? そろそろ、本気出すけど、どうするのかな、ヴォルト・デュラハンさん?」
『……私のラフレシアを、よくも……! あなたなど、私一人で十分です!』
 ヴォルト・デュラハンが攻撃を仕掛ける。ムササビ丸は空高く舞い上がった。
 マリアが目を鋭くし、風の流れを読み取る。ワイヴァーン・ウイングが大きく広げられた。
「ワイヴァーン・レイ。甘く見ちゃダメよ?」
 笑顔で言う。放たれた無数のビーム。ヴォルト・デュラハンはその攻撃を辛うじて避けた。
「あれ、意外と凄い」とマリアがワザとらしい関心を示す。
「でも、あなたじゃ私には勝てないって言うのは決まってるけどね」
『何を……このヴォルト・デュラハン、まだ負けは……!』
「じゃ、こっちも全力で相手してあげるから、逃げちゃダメよ?」
 マリアの余裕な言葉が、ヴォルト・デュラハンを追い詰めていく。



 飛鳥はようやく明日香がいるショップに到着した。
 バトル・フィールドの状況を一人見ている女性――――紅葉に話し掛ける。
「紅葉!」
「『ソード・マスター』!? ……バトルなら、自分の負けです」
んな事は分かってる! それより、明日香は!?」
「分かってる……!? 自分が、星川さんに負けると分かっていた……!?」
 わなわなと身を震わせる紅葉。飛鳥は「それよりも!」と怒鳴りを上げた。
「何でお前はコネクト・アウトしているんだ!? 明日香が攻撃にあったなら、お前も一緒のはずじゃ……」
「自分がコネクト・アウトした直後に、こうなったのです。
 ちなみに、コネクトしようにもロックが掛かっていて、こちらからはコネクトできません」
「コネクトロック!? 明日奈の奴、俺が来る事分かってたって事か……!」
 空いているコクピット・ランサーの元に向かい、コンピュータを直接操作する。
 ドライヴが強い反応を示している。間違いない、『アサシン・ブレード』は姿を現す。
 その前に、急いでコネクトできるようにしないといけない。
「紅葉、ゴウさんに連絡してくれ!」
「リーダーに? ……と言いたいところですが、生憎、リーダーはバトル中の模様です」
「こんな時に……こうなったら、勇治に来てもらうか……」
 片手でコンピュータのロックを外しつつ、ドライヴで連絡を取る。
『……誰だ』
「俺だ……って、お前、何か声死んでないか?」
『風邪を引いた。だから、もうかけてくるな』
 ブツッ。その一言で電話を切られる。飛鳥は「……すぐに切るなよ」と愚痴った。
 しかし、風邪なら文句は言えない。
「と言うか、出番少ないからって、『もうかけてくるな』はないだろ」
「何を言っているのですか、あなたは」
 白い目で睨む紅葉の姿があった。



 再び、別ショップにて。マリアがヴォルト・デュラハンを追い詰めた。
「さぁーて、これで終わりにしようね?」
『そうはなりません……このヴォルト・デュラハンに負けはないのですから!』
 ヴォルト・デュラハンが地上からラフレシアを出す。どうやら、あれは一機だけじゃなかったらしい。
 ラフレシアが6つの花弁を分離し、中心部がヴォルト・デュラハンの背中に合体する。
 ワイヤーで繋がれているラフレシアの花弁から砲門が姿を見せた。
 その姿を見て、マリアが「うわ……」と嫌な顔をする。
「悪趣味ー」
『さあ、覚悟してもらいますよ、ストーム・クラウン』
 ラフレシアの花弁からミサイルが無数に放たれる。ムササビ丸は遥か上空が舞い上がる。
 しかし、ミサイルは意思を持つかのように追って来た。どうやら、追尾型らしい。
「……仕方ないわね」
 ムササビ丸の背中にある『ワイヴァーン・ウイング』が光を発する。
ゴッドステルス・ワイヴァーン。ムササビ丸、本領発揮よ」
 マリアの言葉にコンピュータが『OK!』の文字を表示する。
 ワイヴァーン・ウイングの翼の上から、ビーム状の翼が生成され、ミサイルを全て叩き落す。
 ヴォルト・デュラハンはそれを確認して攻撃しようとしたが、コンピュータには相手の反応がなかった。
『何……これは……!?』
「空の王のレガリア。その真の力は、目視できても、ステルスと同じ力を放つと言う事」
 つまり、人間の目には見えても、コンピュータからすれば捉えられない状態。
 ややこしいが、それが『ゴッドステルス・ワイバーン』と呼ばれる本当のレガリアの力。
 ムササビ丸がドラゴンモードのまま、ヴォルト・デュラハンを睨む。
「私の勝ちって事で、これでフィニッシュね♪ ドラグニア・レディエンス・ワイヴァーン」
 ムササビ丸の全身が光り輝き、光の竜となって体当たりを繰り出す。
 刹那、巨大な手の平がそれを受け止めた。
 ムササビ丸を一握りで潰せそうなほど巨大な手。その巨大さは、通常のドライヴの10倍以上ある。
 ヴォルト・デュラハンは「助かりましたわ」と言った。
『ご無事でしょうか、お嬢様?』
『……ええ、大丈夫ですわ。相手が空の女王とは言え、甘く見ていましたわ』
「……大きなドライヴねぇ。あなたも『ダーク・コネクター幹部』ね?」
 マリアの一言に、巨大なドライヴが目を光らせる。
『正解だ。俺はグレート・ビックフット。お嬢様、撤退です』
『そうですわね。アサシン・ブレードが真の力を引き出したそうですし』
「――――!? ちょっと、それってまさか……!?」
『ストーム・クラウン、レガリアの一つは我らの手中に収めました』
 その一言を残して、二体のドライヴが姿を消す。マリアは舌打ちした。
『アサシン・ブレード』は飛鳥の宿敵とも言える相手。手中に収めたと言う事は、飛鳥は負けた事になる。
 飛鳥が――――『ソード・マスター』が負けたと言う事は、相手はそれ以上に強いはず。
「一人じゃ無理かな……こうなったら、お姉さま達を呼ぶしかないかもね……!」
 コネクト・アウトし、すぐに連絡を取るマリアだった。



 ハデスハーツの攻撃は、シルフィーナディアの前では全く通用しなかった。
 飛鳥の開発したリアクターウイングと言うアクティブ・ウェポンは、『レア・ウェポン』に匹敵していた。
「明日奈、もう戦うのは止めて! 私達が戦うのって間違ってるよ!」
『戦うのが間違ってる!? 私から飛鳥を奪っておいて、そんな事は言わせないわ!』
 ハデスハーツが剣を振るう。
『どうして、飛鳥を好きなったりしたの!? どうして、私から好きな人を奪うの!?
 あなたはいつもそう! 私から全てを奪って、私の居場所をいつも奪うのよ!』
「そんな……そんな事しないよ!」
『だったら、どうして飛鳥を好きになるのよ!? どうして飛鳥はあなたを選ぶのよ!?』
 同じ顔で、ただ性格が違うだけ。それなのに、好きな人はいつも見てくれない。
『答えなさい! あなたはどうして飛鳥を好きになったのよ!』
「……知ってる? 昔の飛鳥君、たまに寂しそうな感じだったって事」
 ハデスハーツの剣をシルフィーナディアがプラズマセイバーで受け止める。
 その力の差は圧倒的にシルフィーナディアが不利なのだが、それでも明日香は必死に受け止めた。
「飛鳥君、お母さんいなくて、お父さんも仕事でいないから寂しくて泣いていたって、知ってた?」
『……嘘よ、それ。だって、飛鳥はいつも明るい性格だったじゃない!』
「ううん。飛鳥君は私達に心配されたくなかったから、無理してたんだよ? 私、それが嫌だった。
 だから、飛鳥君の側にいたいって思った。……それが、気づけば恋になってたの」
『…………』
「それに、私だって、飛鳥君のパートナーになりたくてドライヴを始めたんだもん」
 大好きな人が夢中になったドライヴ。自分の居場所を見つけ、上を目指しているドライヴ。
 その姿を見て、力になりたいと思った。だから、ドライヴを始めた。
「けれど、飛鳥君には勇治君って言うパートナーが出来てた。少しショックだったかな……」
『……じゃあ、なぜドライヴを続けているの?』
「約束したからだよ。いつかAランクになったら、コンビを組もうって約束したから……。
 だから、私はドライヴを続けてるの。明日奈はどう?」
『私は……』
 ハデスハーツが剣を下げる。
『……私は、飛鳥に見てもらいたかったから……私は、あなたの役に立ちたいって伝えたかったから……』
「…………」
『だから……だから、私はドライヴを続けてる……! ダーク・コネクターになった今でも……!』
「……ダーク・コネクターじゃなくても、飛鳥君は見てくれるよ」
 それに、飛鳥はドライヴを始めたと話した時、嬉しそうにドライヴを作ってくれた。
 明日奈もドライヴを始めたと知った時には、「ドライヴの楽しさが伝わるのって、良いな」と言っていた。
「飛鳥君は、明日奈の事もちゃんと見てくれるよ。だから……」
『……もう、無理よ』
「え……?」
『ダーク・コネクターを裏切る事は、死に繋がるのよ。もう普通のコネクターに戻る事なんてできないの』
「で、でも――――」
 瞬間、爆発。二人は同時に爆発のした方角へ目を向ける。
 灼熱に燃え上がるドライヴの姿。その手には、暗黒の剣の姿があった。
 明日奈が目を見開く。
『アサシン・ブレード!?』
『うぉぉぉおおおおおおっ!』
 灼熱のドライヴ――――『ダーク・フォース』である紫電が乗るレーヴァティンがシルフィーナディアを襲う。
『明日香! フレイムヴァイパーッ!』
 シルフィーナディアの前に立ち、ハデスハーツが炎の鞭を振るう。
 レーヴァティンはそれを避け、剣を大きく振り構える。
『熱月ゥゥゥッ!』
 瞬間の斬撃。ハデスハーツはそれをどうにか受け止めた。
 否、受け止め切れなかった。ハデスハーツなど簡単に上回るパワーで吹き飛ばされる。
 レーヴァティンがハデスハーツを睨む。そして、剣に灼熱が絡みつく。
 明日奈は恐怖を感じた。
『灼熱の終――――』
「ゴッドランチャー、シュートォォォッ!」
 放たれる一閃の波動。レーヴァティンはそれを避けた。
 ハデスハーツの前に立つ鮮やかな青い装甲のドライヴ。明日奈は目を見開いた。
『飛鳥……どうして……!?』
「明日奈、一つ聞いて良いか?」
『え……?』
「……お前は、『ダーク・コネクター』を裏切れるか?」
 意外な質問。しかし、明日奈は首を横に振る。
『……無理よ。裏切ったら私は……』
「その事を考えなかったら、裏切れるか?」
『……そう、ね。何も考えないで良いんのなら、ダーク・コネクターを裏切れるわ』
「……そっか。それを聞いて安心した」
 青い装甲のドライヴ――――セルハーツが剣を構える。
 ハデスハーツがゆっくりと立ち上がる。飛鳥は微笑んだ。
「裏切れるなら、俺がお前を守る。……いや、お前を守る事が出来る」
『飛鳥……』
「安心しろ、イブリスとかに命を狙われても、俺が必ずお前を守り通す! 蓮杖飛鳥としてな!」
 その言葉に、ファルシオンセイバーが眩い光を放つ。
 主である『ソード・マスター』の言葉。その言葉に、レガリアが応えた。
 レーヴァティンが立ち上がる。
『蓮杖ぉぉぉ……蓮杖飛鳥ぁぁぁぁぁぁっ!』
「……紫電、今すぐお前の憎しみを消し取ってやる! 覚悟しろ、アサシン・ブレード!」
『うぉぉぉおおおおおおっ!』

 今、『ソード・マスター』と『アサシン・ブレード』の激突の幕が開かれた。



次回予告
 はぁーい、『ストーム・クラウン』のマリアでーす♪
 次回は、いよいよ繰り広げられる飛鳥と紫電の最大バトル。
 その時、厄介な奴がやっぱり現れて……?

 次回、CONNECT18.『二人の力を一つに』

 ドライヴ・コネクト♪ 次回予告したけど、次回出番ないのよ、実は……



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