バトルの終了と同時に、飛鳥はコクピット・ランサーで深い深呼吸を一回だけした。 今までにない疲労感。コクピット・ランサーを開けて、明日香が顔を覗きこませて来る。 「飛鳥君……大丈夫?」 「……まぁ、ね」 明日香に手伝ってもらって、コクピット・ランサーから出てくる。 そして、セルハーツを入れているドライヴを見る。 「……あの技、一体何だったんだ……?」 セルハーツにドライヴを変えてから、最強を誇るミラージュ・ブレイドを超える謎の技。 間違いなく、その強さはバスターファルシオンと言う『ドライヴ=レガリア』の力を超えている。 しかし、クールダウン300秒はとても大きいと思った。 足を一歩踏み出そうとした途端、ふらつく。明日香がそれを支えた。 「……ごめん」 「ううん。ベンチで少し休む?」 「……そうだね。できれば、冷たい紅茶も飲みたい」 「それはワガママ」 軽く頬にキスをする。飛鳥の頬がやや朱色に染まっていった。 そんな飛鳥の姿を遠くから見て、顔をニヤニヤとさせている優と郁美の姿がある。 「ただのはとこ同士にしては、仲良いわね、あすあす♪ ほっぺにチュッだなんて」 「もしかして、付き合い始めたのかしら?」 「……お二人とも、何が言いたいんですか……」 頬を赤くしたまま、飛鳥が訊く。しかし、否定はできなかった。 その隣で明日香も頬を赤くして、下を向いている。「やっぱりね」と優が微笑む。 「まぁ、あすあすが明日香ちゃんを好きだって事分かってたし、恋人同士になれて良かったね、あすあす」 「……って、俺、まだ明日香から答え聞いてないんですけど……」 「何言ってんの、色男♪ その様子じゃ、明日香ちゃんもオッケーに決まってるでしょ」 ポンポンと頭を叩かれる。飛鳥は何も言えなかった。 いや、言える訳がない。特に、先代である彼女達には。 そんな飛鳥達に近づく一つの影。飛鳥がそれに気づくと、明日香もその方向を見た。 明日香と同じ顔立ちで、髪を一本の三つ編みにしている。 「明日奈……」 「……こうやって、顔を見せるのは久しぶりね、飛鳥」 「……そうだな」 飛鳥が少しだけ微笑む。そして、すぐにドライヴを取り出した。 明日奈もドライヴを取り出し、飛鳥に渡す。二つのドライヴを持って、飛鳥が訊く。 「本当に良いんだよな?」 「……ええ。『ダーク・コネクター』じゃなくても、あなたは私を見てくれるから」 「……分かった。『ソード・マスター』の名において、コネクター・星川明日奈のランクダウンを開始する」 飛鳥のドライヴから明日奈のドライヴに光が転送され、明日奈のドライヴの液晶に映る文字が「E」になる。 まだ『ドライヴ・マスター』から了承は得ていないが、それくらい、どうにかしてみせる。 明日奈にドライヴを返す。 「まだ正式じゃないけど、これで、普通のコネクターに戻れるはずだ」 「……ありがとう」 「別に良いよ。……明日奈、前に明日奈が訊いて来た事の答えだけど……」 「明日香が好きなんでしょう?」 「……ああ」 飛鳥が頷く。「そう」と明日奈は明日香の方を見て微笑んだ。 「これで、次の恋が探せるわね、私も」 「……ごめん」 「飛鳥が謝る理由はないわ。でもね……」 明日奈が腕を飛鳥の首に回し、背伸びをする。 飛鳥と明日奈の唇が重なる。飛鳥は目を見開いた。そして、明日香はそれを見て頬を膨らませた。 明日奈が飛鳥から離れ、自分の唇を指でさする。 「あ、明日奈……!? 一体何を……!?」 「ファーストキスは、飛鳥にあげたかったから」 「って、そんな簡単に……って、明日香!?」 恐る恐る明日香の方を見る。頬を膨らませ、嫉妬している明日香の姿が目に入った。 「……飛鳥君なんて、大嫌い!」 「ちょっと待て……明日奈がいきなりやってきたのに、俺のせい……!?」 「私の事好きって言ったのに、明日奈とキスするんだもん……飛鳥君なんて大嫌いなんだから!」 「……俺加害者かよ、おい!? つーか、俺がやったんじゃな――――」 そして今度は明日香が飛鳥の首に腕を回し、キスをする。飛鳥、連続の不意打ち。 パチパチと目を閉じたり開けたりする飛鳥。明日香が頬を赤くしたまま言う。 「これからは気をつけてね?」 「……あ、う、うん……」 飛鳥の顔がさらに紅潮を続ける。このままいけば、頭でお湯が沸かせるのではないかと思わんばかりに。 優が後ろから飛鳥の首を絞める。「このこのー」と嬉しそうな顔をしながら。 「可愛い子二人とキスなんて、あすあすモテモテね〜」 「うぐっ!? ……優さん……首……首絞めて……」 「ん〜? 何か言った〜?」 「だから……首絞めて……」 「あ〜、大丈夫大丈夫♪」 「大丈夫なわけあるかぁぁぁ!」 どうにか振り払う。「あー、やっぱり怒られたー」と可笑しそうに優が言う。 「ま、それはともかく、喫茶店でお祝いしよっか〜。あすあす、お金持ってるよね〜?」 「……って、俺の祝いなのに、俺が払うんですか……」 「違う違う。明日香ちゃんがあすあすと付き合う事になったお祝い」 「そっちかよ!? って、俺も関係する事――――って、え……あぁ……!?」 「ん? どうしたの?」 飛鳥の表情の変化にすぐ気づく。明日香が飛鳥の見ている方角へ目を向けた。 スーツに身を包んだサラリーマンの男性が一人。その目の鋭さは、飛鳥に似ていた。 明日香と明日奈がその姿を見て驚くが、一番驚いていたのは飛鳥だった。 ここにはいないはずの人が――――まだ日本に帰ってくる予定じゃない人が、なぜかそこにいる。 「父さん……何で……!?」 「たまたま日程が早まったのでな。それで……」 父が飛鳥を睨む。 「なぜ、こんな所にいる? 私はドライヴを許可した覚えはないぞ」 「それは……」 言葉に詰まる。確かに、父には黙ってドライヴを始めていた。 しかし、予想外だ。まさか、突然日本に帰ってくるなんて、絶対に思ってもいない。 飛鳥の焦る表情を見ながら、父が口を開く。 「今すぐドライヴをやめなさい」 「え……!?」 「今すぐ引退するんだ、飛鳥。ドライヴを捨てなさい」 「……嫌です」 首を横に振る。 「父の言う事を聞きなさい」 「嫌です! ドライヴは俺にとって大切なものです! 俺に居場所をくれた大切なものなんだ!」 「馬鹿な事を言うな。私の言う事を聞きなさい」 「嫌です! 俺はドライヴを――――自分の居場所を失いたくない!」 「飛鳥!」 父の平手が飛鳥の頬を叩く。飛鳥は父を睨みつけた。 歯をぐっと噛み締め、拳を強く握る。 「俺は絶対にドライヴをやめない! 大体、何で父さんは、ドライヴだけは認めてくれないんだ!」 「そんな事は知らなくても良い」 「知らなくて良いわけがない! 父さん、どうしてドライヴだけ認めてくれないんだよ!」 「お前は知らなくても良い事だ。とにかく――――」 「全てを話したらどうだ、蓮杖常世」 一人の男が現れる。ひげを伸ばしている長身の男。年は父と同じくらいか。 男を見て、父がやや目を見開く。 「久しいな、蓮杖常世。あれから、16年振りか」 「……ガルノアか……正確に言えば、16年半だ。飛鳥が生後半年だったからな」 「ガルノア!? な、何で父さんがガルノアを……!?」 「私が全てを悟りし者であり、そして初代『ソード・マスター』候補と呼ばれていたからだ」 「――――!?」 飛鳥が目を見開く。父はガルノアを鋭く睨んだ。 「何を話す気だ」 「蓮杖常世よ、お前の息子はもう、コネクターの道を歩んでいる。それも、『ソード・マスター』の道を」 「……『ソード・マスター』だと……?」 「そうだ。全てを話せ、蓮杖常世よ。お前の息子の為にも」 その言葉に、父は少しばかり黙り込む。 飛鳥の方を見る。一体何がどうなっているか分からない表情を浮かべている。 しばらくして、父がその重い口を開けた。 「……今から19年前の話だ。まだ小型化、安価になっていないドライヴに私は出会った。 その時は、今で言う『フォース・コネクター』を決めるバトルが行われていた」 「19年前……俺が生まれる前……」 「そして、初代の『ソード・マスター』を決める最後のバトルにおいて、そこのガルノアは一人の女性に負けた。 資質と呼ばれる『鷹の瞳』を持つ女性。私はその大会で、その女性と出会ったのだ」 「……それって、まさか……!?」 「そうだ。私の妻であり、お前の母である春香は、初代の『ソード・マスター』になった人だ」 父の言葉に、飛鳥は目を見開いた。 次回予告 明日香「こんにちは、明日香です」 亜美 「亜美です! お、驚きですよね、飛鳥さんのお母さんが初代『ソード・マスタ』だったなんて……」 明日香「うん。飛鳥君も知らなかった事だし……昔、何かあったのかな?」 勇治 「分かるのは、飛鳥は馬鹿だと言う事だ」 飛鳥 「…………」 勇治 「……熱でもあるのか、お前? いつものツッコミがないぞ」 飛鳥 「…………」 勇治 「……すまん、俺が悪かった。だから、ツッコミを頼む」 次回、CONNECT22.『今明かされる全て』後編 明日香「次回は後編! 皆、楽しみにしててくださいね♪」 勇治 「飛鳥、頼むからツッコミを入れてくれ……」 飛鳥 「…………」 亜美 「い、いつもの飛鳥さんのキャラじゃない……(^^;」 |
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