CONNECT26.『光の銃を持つ白き戦鬼』後編


 飛鳥の『鷹の瞳』が相手の動きを見切り、セルハーツが敵の攻撃を阻止する。
 敵との距離を置き、プラズマセイバーを構えて集中する。
「……くっ!?」
 プラズマセイバーが光を放ちながら形状を変えようとした時に集中力が切れる。
「……まだ集中力が足りないのか……? よし、もう一度……」
『その位にしなさい、飛鳥。もう2時間も同じ事繰り返してるのよ』
『そうだ。無理をすればするほど、あの技のコツなど掴めぬぞ、ソード・マスターよ』
「分かったよ……流石に、俺も疲れてるし……」
 二人の言葉に頷く。飛鳥はこの日、明日奈とガルノアに協力してもらって、必殺技を習得しようとしていた。
 初代『ソード・マスター』だった母の残した必殺技。その威力は間違いなく最強だ。
 シミュレート用のコクピットランサーから降りて一息つく。
「はい」
「ありがとう」
 明日奈からペットボトルの水を受け取り、飲む。一気に喉の渇きが癒された。
「ふう……」
「それにしても驚いたわ。いきなり電話してくるんだもの」
「……悪いな。接近戦で練習相手頼めそうなのは、明日奈とガルノアだけだったから」
「別に良いわ。なにより、あなたの頼みだもの」
 明日奈が微笑む。飛鳥はそんな彼女を見て、やや照れていた。
 間違いなく、この場に明日香がいれば誤解するだろう。それ位、明日奈は可愛かった。
『アサシン・ブレード』の件以来、明日奈は少しずつ変わろうとしているようだ。
「しかし、奴らが裏切った二人に何もしないなんて、妙だな……?」
「おそらく、総帥が放っておくように言ったのだろう。私達は幹部とは言え、知らない事の方が多いからな」
「……それを聞くと、ますます妙だよ。幹部って言ったら、普通は……」
「ええ。普通のドラマとかなら組織について詳しいわ。でも、私達の場合は力を持った”駒”でしかないのよ」
 ダーク・コネクターと言う組織では、いくら幹部とは言え、総帥の姿を見た人間はいない。
 当然、イブリスは例外なのだが。
「……『ダーク・フォース』でも、総帥の事は知らないんだろ?」
「そうだ。『ダーク=レガリア』はイブリスが渡していた」
「イブリスが?」
 イブリスについては先代から色々と聞かされているが、それでも謎は多い。
 一番厄介な相手であり、総帥以上に不明な点が多い敵。
「ソード・マスターよ、『アサシン・ブレード』が倒れた今、奴はお前に狙いを定めるはずだ」
「分かっている。だからこそ、完璧に使えるようにしたい。母さんの技、天翔蒼破絶靭斬を……!」
 あくまで最終手段ではあるが、天翔蒼破絶靭斬があれば心強い。
 ガルノアが飛鳥の瞳を見て笑みを溢す。
「そう言えば飛鳥、『ソード&マグナム』を解消したって聞いたけど……」
「……その話はしないでくれ。正直、まだイラついてる」
「……そう。私で良ければ、いつでもパートナーになってあげるわよ?」
「ありがとう。けど、遠慮しておくよ、明日香との約束もあるしな……」
 飛鳥の言葉に、明日奈は微笑んだ。



 勇治は苦戦していた。間違いなく、相手の方が強い。
 射撃の腕は互角。しかし、厄介なのは敵の持つ資質だった。
 攻撃と言う攻撃全てを『金剛の瞳』で狙った場所を攻撃し、上手く撃ち落とされている。
 そして、今は一体しか攻撃してこないが、二体になれば余計に危ない。
「…………」
『大人しくその銃を渡してもらおうか、マグナム・カイザー』
 白銀のライフル――――レイ・スペル・ショットの銃口がディル・ゼレイクに向けられる。
 その時、亜美の乗るエル・センティアがディル・ゼレイクの前に立ちはだかった。
「亜美、何でコネクト・アウトしていない? 危険だと言ったはずだ」
「お兄ちゃんは黙ってて!」
「…………」
 勇治が黙る。やはり、妹には弱かった
 亜美がレイ・スペル・ショットを持つドライヴを睨む。
『どけ。俺の目的は、マグナム・カイザーの銃を手に入れる事だけだ』
「どかない! お兄ちゃんに攻撃しないで! お兄ちゃんは、私にとって大事なお兄ちゃんだから!」
『……どけ。さもなければ、お前も撃つ』
「どかない! お兄ちゃんには、絶対に攻撃させない!」
『…………』
 レイ・スペル・ショットが下げられる。彼は攻撃を止めた。
『俺は、純粋な魂を持つ少女を撃つ事などしない。朧、退くぞ』
『撤退!? 何をお考えですか!』
『あの少女を前に、戦意を失くした。ここにいれば、他のフォース・コネクターも現れる』
『しかし!』
『闇夜の姫君、ここは、ダーク・フォースの指示に従いましょう』
 姿を見せる一体のドライヴ。漆黒に染まった天使の翼を持つ、イブリスの駆るエヴィル・アスラフィルだ。
 イブリスが静かに語る。
『探しましたよ、アサルト・ハンター。勝手な行動は控えて頂かないと』
『俺の勝手だ。どうでも良い事だろう』
『そうはなりません。我々幹部の役割は、あなたのサポート、そして監視です』
『……撤退だ。良いな?』
『ええ、構いませんよ。闇夜の姫君も、分かっていますね?』
『……はい。指示に従います』
 アサルト・ハンターと呼ばれた『ダーク・フォース』が、静かに勇治を睨む。
『次出会いし時こそ、お前の持つ銃を渡してもらう』
「…………」
「朧さん!」
『……亜美ちゃん、私とあなたは敵なの。次会う時は、あなたを撃つしかないわ』
 敵が姿を消す。勇治は静かに歯を噛み締めた。
 あの銃を持つ今度の敵は、自分より上の実力を持っていた。
「……ふざけやがって」
 今までにない感情を見せる。そして、亜美はショックを受けていた。
 一緒にバトルをしてくれた人は『ダーク・コネクター』と言う立場の人だった。
 信じられない、信じたくないと言う気持ちがあった。
「……朧さん、良い人なのに……」



 コクピットランサーから降りると、『ディフェンド・キング』であるゴウが来ていた。
 いや、マリアとゴウのチーム『ランドライザー・コマンド』の参謀である晃鉄も一緒だ。
 勇治の姿を見つけ、マリアが速攻で頬を引っ張る。
「人の助っ人依頼無視して、勝手に行かないでよ、勇治〜!」
「にゃをいう、ほっちのほうがゆうせんだ」(訳:何を言う、こっちの方が優先だ)
「で、間違いなく、『ダーク・フォース』だったわけ?」
「ほうだ。ひはも、へひははぐへんぎのようだ」(訳:そうだ。しかも、敵は白戦鬼のようだ)
「白戦鬼? 何、そんな姿のドライヴって事?」
「白戦鬼だと? まさか……!?」
 晃鉄が目を見開く。ゴウが晃鉄の方を見た。
「知り合いか何かかい、晃鉄?」
「……白戦鬼は、俺の親友だった男が使っていたドライヴです」
「はんだと?」(訳:何だと?)
「……マリア、いい加減に勇治君の頬を放したらどうだい?」
「……あ、忘れてた」
 マリアが勇治の頬から手を放す。勇治の頬はわずかに赤くなっていた。
 晃鉄が話を続ける。
「あれは、まだ俺がチームに入る前の事です。俺は、一人の親友とドライヴを始めました。
 親友とはコンビを組まずに、互いをライバルとして、互いに強くなっていったんです」
「その親友の名前って何なの?」
「……村瀬将射。あいつは、無口な奴で変な趣味を持ってはいたが、良いコネクターだ」

 チームに入る前に、互いに『フォース・コネクター』の座を目指して腕を磨き合った親友。
 互いにランクアップをしていったが、Bへのランクアップを決めるバトルで全てが変わった。
 晃鉄との間に出来た差が、彼に焦りを生み出す結果となり、敗北し続けたのだ。

「村瀬は、俺との差を一秒でも早く縮める為に、強い力を求めていた……」
「なるほど、そこをイブリスに目を付けられたか」
「強い力、ね……。勇治、どうするの?」
「決まっている。俺は、奴の持つ『レイ・スペル・ショット』を破壊する」
 自分一人では無理だった過去を思い出す。今度こそ、一人であの銃を破壊する。
 たとえ、相手が知人の友人であったとしても、だ。
 晃鉄が渋々と頷く。
「……村瀬を救ってくれとは言わない。逆に、あいつに間違っている事を教えてやってくれ」
「当然だ。あの銃を持つ男にも容赦はしない」
 勇治の瞳が静かに鋭く、そして恐い雰囲気を見せる。



 漆黒が広がる暗い部屋で、朧は激しい頭痛に悩まされていた。
 なぜか、頭が痛い。何かが頭の中で動いているような。
「う……く……」
 今まで、こんな事は一度もなかった。そう、一度も。
 初めてだ。突然、こんな頭痛が起こると言うのは。
 その様子を、イブリスが遠くから見て静かに呟く。「何かが影響したか」と。
「……早めに手を打っておく必要がありますね」
「イブリス」
 ふと、一人の男に呼ばれる。イブリスは彼の方を向いた。
「『アサルト・ハンター』ですか。私に何か?」
「奴……『マグナム・カイザー』には『ソード・マスター』も一緒にいると聞いていたが、いなかったぞ」
「最近のニュースをご覧になっておりませんか? 決裂したそうです」
「…………」
「レガリアの一つ『サタン・オブ・マグナム』を手に入れるには好都合ですよ、アサルト・ハンター」
 不敵にイブリスが笑みを浮かべた。



次回予告

 美里「どもども、『チーム・アレス』のリーダー、大滝美里です!」
 曜 「あ……どうも、『チーム・アレス』の黒石曜です」
 美里「ん? 私達の事が分からないって? だったら、本編読み返しなさい!
 曜 「み、美里さん……(汗)」

  次回、CONNECT27.『グロウファルコンでも強い奴』

 美里「私のドライヴは、パーツを組み替えれば違ったドライヴになるの!」
 曜 「でも、美里さん、そこまで活躍は……」
 美里「何言ってるのよ! 私の活躍は結構大きいわよ!」
 飛鳥「……つーか、そこの二人、次回予告しろって(汗)」



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