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バトル開始早々、飛鳥はその強さを見せ付けていた。それも、本来のドライヴではない状態で。 飛鳥の強さを前に、キシンに乗る曜がやや呆然とする。 「黒石さん、生徒会を除いた奴らは任せる」 「え！？ あ、はい……」 「って、ちょっと、それはリーダーの言う事じゃない！？」 美里のツッコミを無視し、グロウファルコンが動き出す。曜のキシンも動き出した。 自分の発言を全く聞いてもらえなかった美里は、迷わず狙いを飛鳥へと向ける。 「ここで蓮杖君を倒せば、私が『ソード・マスター』に……」(※なれません) 「……やめなさいって。曜がキレても知らないわよ？」 その言葉に、美里は大人しくなった。その恐ろしさを知っている為に。 グロウファルコンの無傷な姿を見て、驚愕する悠太。 命中したはずだった。しかし、寸前で避けられたのかもしれない。 『くそっ、だったら！』 実体剣を手にする。 『真衣、援護頼む！ 大地と佳代はもう一体の方を！』 『うん、悠太君！』 『オッケー、任せて！』 『悠太、絶対に負けんなよ！』 『当然だ！ いくら相手が蓮杖だからとは言え、俺は負けない！』 ロード・プロヴィデンスがグロウファルコンに向かって突撃する。 剣同士が互いにぶつかり、響きの良い音を響かせた。 『悠太君、避けて！』 ロード・プロヴィデンスが宙へ舞う、その後ろから、一体のドライヴが攻撃を仕掛けた。 幻想的な弓を持った女性型のドライヴ。その弓を見て、飛鳥が目を見開く。 弓矢型のアクティブ・ウェポンから、ゴッドランチャーと互角の威力のビームが放たれた。 実体剣カタルシスのシールドを展開させ、飛鳥が防御する。 「この威力からすると、『レア・ウェポン』……やはりエルヴィン・アローかよ……」 自動的にビーム状の矢を生成し、それを射る弓型の『レア・ウェポン』。 その威力は、弦を引いている時間が長ければ長いほど高まる。 「こっちに二体、黒石さんの方に二体ずつか……チームワークとしては、良いかもな」 しかし、負ける気はしない。たとえ、１対４でバトルをしたとしても。 ロード・プロヴィデンスが空中から降り、グロウファルコンとぶつかり合う。 その隙にロード・プロヴィデンスの後方から援護射撃もあるが、全て避ける。 『くそっ、また……！』 「甘いぜ、生徒会。まだグロウファルコンは全力じゃない」 飛鳥が余裕の言葉を放つ。 曜はキシンの機動性の高さに驚いた。 バトル前から、キシンの強さは伝わってはいたが、これは意外だった。 ブラックダイヤモンドと同じように瞬発性が高い。 「これが、蓮杖君のドライヴを作る実力……」 キシンが両腰の鞘に納刀されている武器の柄を手に取り、同時に引き抜く。 同じ長さの刀と剣。剣の方は刀身が片刃となっている。 少し不釣合いのように思えるが、その軽さは前の刀など比べ物にならない。 キシンが騎士型の重武装を思わせる鎧を纏ったドライヴに仕掛ける。 『っと、危ねぇ危ねぇ……』 両腕に装備されている盾で受け止められる。曜はすぐに距離を置いた。 騎士型のドライヴに乗る槍条大地（そうじょう だいち）が苦笑いを浮かべる。 『悠太が作った今度の盾、意外とやるじゃねぇか』 『そうでもないけど？ 大地、盾がどうなってるか良く見たら？』 拳闘士型のドライヴを動かす姫神佳代（ひめがみ かよ）が言う。大地はそれを見て驚いた。 盾には綺麗に亀裂が入っており、今にも崩れそうだった。 『……一撃でこれかよ！？』 『と言うより、向こうが強いだけ。やる気が出てきた。へへへ〜』 佳代がにやけて笑う。曜はその強さを実感していた。 間違いなく、キシンと言うドライヴは強い。そして、自分の戦い方に合わせられているのも分かった。 キシンが構える。 「飛燕・乱舞！」 二体に向けて刀と剣を何度も振るう。いくつもの真空刃が放たれた。 『ここはあたしのシリウスに任せて！』 拳闘士型のシリウスが拳を構え、真空刃を叩き落す。 キシンがシリウスに距離を詰める。刀と剣を共に鞘に戻し、刀の柄に手をかけた。 一瞬の抜刀がシリウスを襲うが、佳代はどうにか避けた。 『当たったら一撃で倒されそうだもんね――――って！？』 刹那、抜刀された刀が向きを変えて襲い掛かる。シリウスの左肩の装甲が持っていかれた。 「閃光・双牙！」 刀が再び鞘に戻る。その意外な攻撃に、佳代は驚いていた。 そんな彼女を余所に、大地が自分のドライヴの鎧を排除する。 『って、大地、何でクーフーリンのアーマーをパージしてんの！？』 『こいつの相手は分が悪いって事で、どうにか一つ』 『何言ってるのよ、この馬鹿！』 『大丈夫だって、お前なら。こっちは空飛んで生き延び――――のびょろろろろっ！？』 大地のクーフーリンが鎧を排除し、空中へと舞い上がった瞬間、巨大な爆発が起きる。 「あちゃ、外れたみたい……やっぱり、千里がいないと命中率低いわね、姫里……」 「余計なお世話。それにしても、あのドライヴが飛行するって良く知ってたわね、美里？」 「当然、調べたからでしょ。『アンリミテッド』のドライヴは全て調べてるけど？」 「……リーダーらしい事した訳ね、珍しく」 「曜の為でしょ。まぁ、蓮杖君と一緒にバトルするのは予想外だったけど」 そして、美里のローズウェルがクーフーリンへと接近する。 通常のものより長いロングプラズマセイバーが振り落とされる。 『テメ、卑怯だぞ、こっちの事調べてるなんてよ！』 「別に良いでしょ、それ位。そんな事じゃ、総合Ａでも生き残れないわよ？」 「美里が言える台詞じゃないでしょ……曜のお蔭でアレスは総合Ａで生き残ってるわけだし」 「そこ、余計な事は言わない！ 曜、こっちは私に任せて、目の前に集中！ 全力でやっちゃいなさい！」 「はい、美里さん！」 悠太は苛立ちを抑えられなかった。間違いなく、飛鳥は手加減している。 こっちの攻撃を全て剣一本で受け止めているグロウファルコンから距離を置く。 『くそっ、絶対に蓮杖に勝ってやる……真衣、ブリュンヒルドはまだいけるか！？』 『大丈夫、そんなにエルヴィン・アローを撃ってないから。どうするの？』 『ファイナルジャッジを使う！ 必ず、蓮杖に一撃を与える！』 真衣の乗るブリュンヒルドがエルヴィン・アローを引く。ロード・プロヴィデンスも動いた。 ブリュンヒルドの隣にまで移動し、剣をグロウファルコンへと向ける。 背中のリングが高速回転し、剣にエネルギーが込められていく。飛鳥はそれを見て目を見開いた。 「まさか、『スキル・プログラム』……！？」 『くらえ、蓮杖！ ファイナルジャッジ！』 二体のドライヴから放たれる二本の波動。互いに絡み、グロウファルコンへと迫る。 その波動の速さに驚く飛鳥。瞬間、大爆発が起きた。 『やったのか……！？』 『そうだと良いけど……――――悠太君、あれ！』 真衣が気づく。爆発した場所にグロウファルコンの姿はなかった。 ゴッドランチャーが大地に突き刺さった状態で立っている。 あの技で避けられた。それも一瞬のうちに。 「まさか、このバトルで『鷹の瞳』を使うとは思わなかったぜ……あと、ゴッドランチャーを捨てる事もな」 空から飛鳥の声が聞こえる。グロウファルコンは、爆風を生かして宙を舞っていた。 二本の剣を構え、飛鳥が反撃に移る。 「ツイン・エアブレード！」 二本の風の刃を放つ。ブリュンヒルドが襲われた。 風の刃で動きを止められたブリュンヒルドの前にグロウファルコンが舞い降り、斬撃が繰り出される。 『嘘……きゃぁぁぁっ！』 「ミラージュ・ブレイドッ！ ……女の子のドライヴを倒す時って、何か罪悪感があるよな……」 『真衣！ ……この、蓮杖ぉ！』 ロード・プロヴィデンスの背中のリングが再び高速回転を始める。 剣にエネルギーが回り、光っている。それを見た飛鳥もすぐに応じた。 二本の実体剣を向かい合わせに合体させる。 ロード・プロヴィデンスの剣が、バスターファルシオンのようなビーム状の刀身を放つ。 『グランエクス・ブレード！』 「合体剣カタルシス・シンクレア！」 合体した二本の実体剣から巨大なシールドが発生し、攻撃を防ぐ。 受け止めてはいるが、グロウファルコンは徐々に後退している。 間違いなく威力は高い。カタルシスだけでシールドを展開していれば、間違いなく直撃だ。 攻撃を防ぎ止め、すぐに合体した実体剣を分離させる。 そして、今度は一つに重ねるように合体させた。 「合体剣シンクレア・カタルシス！」 カタルシスのシールド展開が行われ、それを型にするかのようにシンクレアのビームが剣を覆う。 結果、巨大なビーム状の刀身を纏う実体剣が完成した。 『……あの技を受け止めた……どうなっているんだ……！？』 悠太の頬を冷たい汗が流れる。正直、飛鳥の強さの前に、少し恐怖感が湧き上がる。 しかし、このまま負けるわけにはいかない。いつかは自分が『ソード・マスター』になる為に。 『このバトルで使う気なんてなかったけど……！』 画面に『SYSTEM OVER-DRIVE OK?』と表示される。悠太は迷わず発動させた。 コンピュータが『SYSTEM OVER-DRIVE START!』と反応する。 ロード・プロヴィデンスのカメラアイが赤色に変化し、機体をオーラのようなものが覆った。 シリウスを相手に、キシンが斬撃を繰り出す。 一体に集中して戦えるせいか、曜の強さは以前とは全く異なっていた。 刀を鞘に戻し、すぐに抜刀する。そして、その勢いのまま全体を回転させた。 「死閃！」 抜刀から追撃を加えた四連撃。シリウスが後ろに引き下がる。 刹那、キシンが再び刀を鞘に戻し、懐に潜り込んだ。 『ちょ、早――――』 「――――！」 キシンが抜刀と納刀を繰り出す。シリウスの全身に、計１７もの斬撃が刻まれた。 「……奥義、瞬」 シリウスが爆発する。そして、キシンが片膝を大地につけた。 しかし、大破はしていない。コンピュータには『COOL-DOWN COUNT.60』と表示されている。 「瞬で壊れていない……ブラックダイヤモンドと違って、キシンは瞬くらいで倒れない……」 これが、蓮杖飛鳥と大滝美里の大きな違うなのだろう。 キシンの強さを実感し、これなら、と曜の瞳に輝きが増していく。 動けないキシンの姿を確認して、クーフーリンが攻撃を仕掛ける。 「おっと、そうはさせないわよ！」 ウイングユニットの腰辺りに装備しているキャノンを構え、ローズウェルが阻止する。 その威力は、地面を抉り取るほどだった。 『げっ、んな装備持ってたのかよ！？』 「当ったり前でしょ！ 私とローズウェルを甘く見たら痛い目見るだけよ！」 『くっそー……格闘が馬鹿強いのが一体、強力な遠距離撃って来るのが一体……！ オマケに空もかよ……！』 「さあ、どうする！？ これで３対１でこっちが有利よ！」 『こっちは残り２体……とりあえず、逃げる！』 クーフーリンが後退する。それをローズウェルが追いかけるが、スピードに差が出ていた。 「ちょっと、逃げるなんて卑怯でしょ！」 『うるせえ！ わざわざ不利な状態で戦う気なんかねぇよ！』 「姫里、攻撃！ 当たらなくても攻撃！ 下手な鉄砲も数撃てば当たる！」 「……それって、馬鹿にしてない、美里？」 「……し、してないわよ！？」 しかし、なぜか目が泳いでいたりするのは言うまでもない。 曜がキシンのクールダウン終了を確認し、すぐにクーフーリンを地上から追いかける。 「って、曜！？」 「大丈夫です、やれます！」 クーフーリンを追いかけるキシン。それに気づいた大地は、逃げながらビームライフルを撃った。 キシンへとビームが迫るが、キシンに命中する前に軌道が反れて外れる。 『なぜに！？』 「斥力！？ 蓮杖君ってば、あんなもの作れるわけ！？」 「美里より良いもの作れるから当然でしょ？」 「う……」 「参ります！」 キシンが刀と剣を持ち、空を十字に斬る。しかし、何も起こらなかった。 「え……？」 「あれ、何も起きてないわよ、曜？」 「はい……ですけど、手応えは確かに……」 『何がやりたいのか分かんねぇけど、とにかくラッキー！』 「あ、逃げるな、そこ！ 曜、こうなったら搭載してるシステム使ってもう一度やっちゃえ！」 「システムって言うと……このオーバー・ドライヴ・システムですよね？」 「そう、それそれ！ それならキシンの強さは約２倍になるはずよ！ 多分だけど！」 「多分じゃダメでしょ……」 「良いの！ 曜、とにかく発動！」 「は、はい！」 キシンに搭載されているオーバー・ドライヴ・システムを発動させる。 鬼の面が上に移動し、キシンの素顔が露わになり、そのカメラアイが赤色に変化する。 そして、赤いオーラのようなものがキシンに纏わり、それを見ていた大地は目を見開いた。 『あれって、確か悠太も持ってる……！？』 「……再び、参ります！」 刀と剣で空を十字に斬る。十字状の真空刃が発生した。 手応えはある。これなら使える。 「奥義、青龍壊燼撃！」 真空刃の中心に二刀を突き込む。辺りの風が収束され、竜巻が放たれた。 龍の姿をした竜巻。口を開き、雄叫びを上げるかのような動作から、まるで本物のように思える竜巻。 それを見た大地は、もはや逃げられないと確信していた。 『……悪ぃ、悠太。俺もここで散るみたいだ』 瞬間、龍の姿をした竜巻がクーフーリンを呑み込んだ。 ロード・プロヴィデンスに纏われるオーラを見て、飛鳥は歯を強く噛み締めた。 思い出したくもない事を思い出してしまう。 瞬間、ロード・プロヴィデンスが攻撃を仕掛ける。 『覚悟しろ、蓮杖！』 「…………」 突撃し、実体剣を振り落とすロード・プロヴィデンス。刹那、グロウファルコンが姿を消した。 否、ロード・プロヴィデンスを上回る機動性で背後に回ったのだ。 『速い……！？』 「――――お前の負けだぜ、生徒会」 飛鳥が呟く。瞬間、ロード・プロヴィデンスに光の斬撃が走った。 必殺のミラージュ・ブレイド。ロード・プロヴィデンスが爆発する。 「バトル終了ッ！ 勝者、『チーム・アレス With ソード・マスター』！」 バトル終了後、飛鳥はすぐにその場から立ち去った。それも不機嫌な顔で。 「あ、蓮杖君……」 「……うわ、バトル終わって機嫌悪くなってない？ 勝ったのに」 「美里が何かしたんじゃないの？」 「してないわよ！ それより曜、さっきの技だけど……」 「あ、はい。美里さんが搭載したシステムを発動させて使ったら手応えもちゃんと……」 「……ちょっとキシン貸して」 曜からキシンを受け取り、美里がすぐに調べる。 「……あ、オーバー・ドライヴ・システムが制限かけてる。無理やり搭載したせいで」 「やっぱり美里が原因じゃない。勝手に改造なんてするから……」 「う……」 「あ、で、でも大丈夫ですよ、美里。これなら、もう一度ＳＲを目指す事ができます」 曜が自信を取り戻す。それを見た美里は結果オーライだと開き直った。 飛鳥は怒りを堪え切れなかった。近くの壁を強く叩き、その痛みで怒りを打ち消そうとする。 まさか、オーバー・ドライヴ・システムを持っている人間がまだいるとは思っていなかった。 「何であのシステムを使うんだ……あれは、俺達コネクターにとって脅威なのに……！」 使い方を間違えれば、引退を引き起こすほどのシステム。 「……分からない。あの馬鹿の考えてる事が分からない……！」 「あ、飛鳥……君……」 後ろから声をかけられる。明日香だった。 飛鳥がすぐに勇治の姿がないか確かめる。「大丈夫」と明日香が小さく答えた。 「今日は一人なの……だから、勇治君と亜美ちゃんはいないよ」 「そうか……」 「……ね、ねえ、飛鳥君。どうして勇治君とケンカしたの？」 「…………」 「教えて、飛鳥君……」 「３年前の事だよ」 飛鳥が口を開く。 「……３年前、勇治はオーバー・ドライヴ・システムのせいで資質を失いかけたんだ」 「え……勇治君が！？」 「ああ。無謀とも言える連続使用。それが、あいつの身体に過大な負荷をかけ、一度病院に運ばれた」 オーバー・ドライヴ・システムの連続使用。それは、自殺行為にしか過ぎない。 ただでさえ、一度で負担が大きいものを連続で使った勇治は、その時に資質を失いかけた。 「資質を失いかけた時、勇治は自暴自棄になった。……あの勇治の奴が、自暴自棄だぜ？ どうにか資質は失われなかったけど、その時俺達は決めたんだ。二度と使わないって……」 「二人で……？」 「ああ。なのに、あいつは平気で亜美ちゃんに使わせた」 二度と使わない。その約束は守っているつもりなのだろう。 しかし、あのシステムの恐ろしさを知っている本人は、自分の妹に使わせた。 それが許せなかったのだ。勇治の考えている事が分からなくて。 だからこそ、飛鳥は勇治を殴った。誰よりも勇治を信頼している相棒として―――― 次回予告 明日香「こんにちは、明日香です」 明日奈「明日奈です。なるほど、飛鳥が彼を殴ったのはそう言う事だったのね」 明日香「うん……飛鳥君は勇治君を信じていたから、あの時……」 次回、CONNECT29.『二人がケンカした理由』後編 明日香「次回は、いよいよ勇治君の本心が明らかに！？」 明日奈「最近は前編・後編が多いわね」 明日香「それは作者さんの都合だと思うよ……？」 ※そこ、痛いとこ突かない_|￣|○ |
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