CONNECT31.『姫君の真実』


『ボルト・プロディネンス』
 エヴィル・アスラフィルの両手に雷が集中され、放たれる。セルハーツは素早く避けた。
 左腕のガトリングガンを突き向けて放つ。しかし、暗黒のローブの前に防がれた。
 バリアによって弾丸が全て軌道を反れる。
「……やはり、そのローブは『レア・ウェポン』だな?」
『ご名答。これがグラヴィ・クロークです』
 グラヴィ・クローク。ローブなのに重力フィールドを形成できると言う優れた防御型アクティブ・ウェポン。
 セルハーツがファルシオンセイバーを両手で持ち、飛鳥は集中力を増す。
『どう戦う気ですか、ソード・マスター?』
「いつも通り戦うさ。見せてやるよ、俺の本気をな」



 亜美のエル・センティアを前に、朧のオーディーンが斬鉄剣を振り下ろす。
 その攻撃に、亜美は盾を目の前に出した。瞬間、盾からバリアが形成される。
『バリア形成……!?』
「え……?」
 斬鉄剣を防ぐバリア。亜美の頭には「?」が浮かんでいた。
 特別な事はやっていないのだが、勝手にバリアが形成された。
 エル・センティアから距離を置き、朧が冷静に把握する。
『接近戦用に作られたバリア……だからこそ、通常の斬鉄剣じゃ通用しないようね』
 流石は『ソード・マスター』蓮杖飛鳥だ。そのアクティブ・ウェポンの性能は高い。
 斬鉄剣にエネルギーを集中させ、オーディーンが再びエル・センティアへと襲い掛かる。
 刹那、四連発の弾丸が放たれ、それを避ける。
 赤熱のドレスを身に纏った女性型のドライヴ。両手に握る銃は、彼女の強さを見せていた。
「やれやれ、しょうがない妹ちゃんね」
 そのドライヴ・獅王紅蓮姫の持ち主である優は、やや呆れつつ言った。
「一般のコネクターは大人しくしてなさいって、言ったでしょ?」
「で、でも……」
「とりあえずコネクト・アウト。ゆうゆう達の邪魔はしたくないでしょ?」
「うぅ……」
 何も言えなくなる。獅王紅蓮姫の姿を見て、朧が口を開く。
『獅王紅蓮姫……なるほど、あなたが先代のマグナム・カイザー……』
「正解。私が相手してあげるから、我慢してね♪」
『そのような余裕、すぐに消し去ります』
「朧さん!」
 エル・センティアがオーディーンの前に立ちはだかる。
「朧さん、こんな事やめてください! 朧さんは悪い人じゃないです!」
『言ったはずよ、それは偽りの姿って。だから、そこをどいて』
「どきません! 朧さんは良い人です! だから!」
『どいて、亜美ちゃん。そうしないと、私はあなたを……』
「……倒さないといけないんですよね? でも、それができないんですよね?」
『……!』
「朧さん優しいから、そんな事できないと思います」
『…………』

 ――――お姉ちゃんは優しいから、そんな事できないよ?

『――――!?』
 突然、オーディーンが片膝を大地につく。優の表情が変わった。
 頭を抱え込むオーディーンの姿。亜美が声を上げる。
「朧さん!?」
『う……く……ううっ……! み……みつ……き……』
「なるほど、そう言う事ね」
 優が朧の状態を見て答える。



 サタン・オブ・マグナムとレイ・スペル・ショットによる激突。
 威力は間違いなくサタン・オブ・マグナムが上なのだろうが、全て阻止される。
「くっ……」
 勇治が舌打ちする。敵の強さからして、それほど資質の力は使っていない。
 攻撃を阻止しているのは、間違いなくレイ・スペル・ショットの連射性能によるものだ。
 サタン・オブ・マグナムを超える異常なまでの連射性能。
 レイ・マキシマムに乗る『アサルト・ハンター』が、ディル・ゼレイクの急所となる点を見出す。
『終わりだ』
 何発か適当な場所に撃つ。そして、瞬時にもう一度同じ場所に撃った。
 最初に撃った弾丸に、二度目に撃った弾丸が命中し、軌道を変えてディル・ゼレイクへ向かう。
 勇治は目を見開いた。ディル・ゼレイクの両肩のゴッドランチャーが破壊される。
「何だと……!?」
『ミラージュ・スペル。これが、俺とお前の実力の差だ』



 朧の異変に気づいた優がコンピュータで確認する。
 そして亜美は、朧の苦しむ姿を見て戸惑っていた。
「朧さん、どうしたんですか!? 朧さん!?」
「落ち着いて。あれは、精神操作によって封印されてる記憶が解けようとしてるのよ」
 優が答える。亜美は「え?」とした顔で優を見る。
「どうやら、彼女は操られてるみたいね。けど、妹ちゃんとの接触で、それが壊れようとしてるわけ」
「じ、じゃあ、朧さんは……」
「純粋な『ダーク・コネクター』じゃないって事。けど、このままじゃ危ないかな」
「え……!?」
「解けようとしてる状態だけど、ドライヴの方は逆に彼女の精神を支配しようとしてる」
「えぇぇぇっ!?」
 どんなに本人が自らの意思で呪縛から逃れようとしても、ドライヴがそれを阻止している。
 それは、下手するとコネクターを精神崩壊まで追い込んでしまう。
「このままじゃ朧さん……!」
「時間稼げる?」
「ふぇ?」
「イブリスの事だから、ドライヴに精神操作を維持してるシステムが搭載されてるはずなのよ。
 それを破壊するのは簡単だけれど、どこに搭載されてるか探す時間が必要ってわけ」
「時間稼ぎって、私じゃ……Dランクだし……」
「弱気にならない。コネクターとして強くなりたいなら、やるしかないよ?」
 オーディーンが立ち上がり、斬鉄剣を構える。どうやら、ドライヴがコネクターを支配したようだ。
 優が急いでコンピュータを使って探し始める。
「自分のドライヴの特性と、アクティブ・ウェポンの特性を掴めば大丈夫。
 なにせ、そのドライヴはゆうゆうので、アクティブ・ウェポンは私も認める天才のお手製でしょ」
「お兄ちゃんのドライヴ……」
「こっちもできるだけカバーしてあげるから、しっかりね」
「……は、はい!」
 エル・センティアが盾を持って突撃する。オーディーンは斬鉄剣を振り落とした。
 しかし、エル・センティアの盾がバリアを形成して防ぐ。
「……え、えっと……飛鳥さんが作ってくれた盾の操作って、どうすれば良いんだろう……」
 早くもピンチだった。武装の使い方が分からなければ、全く意味がない。
 オーディーンが再び斬鉄剣を振り落とす。それを、セルハーツが防いだ。
 ファルシオンセイバーで斬鉄剣を受け止め、ゴッドランチャーで空中のエヴィル・アスラフィルを狙う。
 オーディーンを振り飛ばし、飛鳥が肩を落とす。
「……亜美ちゃん、その盾の特徴が何なのか分かってる?」
「え?」
「その盾考えたのは、亜美ちゃんだろ?」
「……あぁ!?」
 何かを思い出す。飛鳥は苦笑した。そして亜美に訊く。
「分かったら、あとは大丈夫だね?」
「は、はい! って、飛鳥さん、どうして私が忘れてた事分かったんですか?」
「時間稼ぎをやるのに、それができてなかったから。その盾について忘れてたんだろうと思ってね」
「なるほど……」
 流石は、『フォース・コネクター』だった。
 飛鳥のセルハーツがエヴィル・アスラフィルに突撃する。エル・センティアは盾を前に構えた。
 赤熱の盾の中心部が回転し、獅子の顔を見せる。そして、盾が獅子の顔を中心に6つに分離した。
 5つのパーツがエル・センティアの腕、脚部、背中、そして頭部に装備される。
 獅子の瞳に光が灯り、エル・センティアが見事、獅子型のドライヴに変形した。
「わわっ、本当に変形しちゃった……」
 亜美が考えたアクティブ・ウェポン。それは、ドライヴに可変機構を追加させるもの。
 通常、可変機構はドライヴを作る時に盛り込ませればいけない。
 しかし、それをアクティブ・ウェポンで見事実現させたのだ。
「これなら、朧さんを……!」
 獅子となったエル・センティアが突撃する。オーディーンは斬鉄剣を構えた。
 向かってくるエル・センティアに斬鉄剣を振り落とす。しかし、素早く避けられた。



 エル・センティアの変形を見たイブリスが、微かな笑みを浮かべる。
『なるほど、アクティブ・ウェポンによる可変機構の追加ですか』
「原理的には可能だからな。ただ、重量が半端ないのを除けば」
 ゴッドランチャーを構え、飛鳥がイブリスを睨む。
「違法ウェポンによる精神操作及び、洗脳操作。俺は絶対にお前を許さない!」
『私を倒せると思っているのですか? あなたでは、私は倒せませんよ』
「倒すさ。俺は、『ソード・マスター』だからな!」
 ゴッドランチャーを撃ち、セルハーツが空高く跳躍する。
 ファルシオンセイバーを構えるセルハーツ。エヴィル・アスラフィルは右手を前に出した。
 氷の飛礫が発生して集結し、一本の剣を作る。
 空中でぶつかる二体のドライヴ。



 エル・センティアの意外な変形を見て、優は「ひゅー」と関心を示す。
 アクティブ・ウェポンによる可変機構の追加は作ろうとはしたが、重量が重量だったのでやめていた。
 しかし、こうして見ると、ドライヴの全重量はともかく、良いのかもしれない。
「ま、あすあすが作ったんだから、重量も出来るだけ軽く作ってるんでしょうけど」
 その時、コンピュータが反応する。見つける事ができた。
 意外と単純な場所に搭載しているようだ。お陰で、見つけるのも早い。
「じゃ、久々に見せてやりますか」
 赤熱の銃レオ・デリンジャーを前に、黒曜石の銃ファング・ガバメントを後ろで合体させる。
 二つで一組の『レア・ウェポン』。その真価は、この合体した銃にある。
 優の瞳が鋭くなり、『狙撃の瞳』が狙いを定める。
「妹ちゃん、合図と共に大ジャンプ。オッケー?」
「ジャンプって……飛ぶんですか!?」
「飛ぶじゃなくて、跳ぶ。相手が剣を振り下ろした時が合図。その時、妹ちゃんはジャンプする」
「は、はい……」
 オーディーンが剣を振り下ろす。亜美は優に言われたまま、剣を避けてジャンプした。
「……ターゲット・ロック完了。クリムゾン・フレア、レッツ・ゴー」
 獅王紅蓮姫がクリムゾン・フレアを撃つ。高速で弾丸は一発だけ放たれた。
 斬鉄剣を振り下ろしているオーディーンの右肩が撃ち抜かれる。
『――――!?』
「紅蓮の弾丸、結構効くでしょ?」
『あああ……ああああああっ!?』
 オーディーンから朧の激痛の叫びが響き渡る。亜美は目を見開かせた。
「朧さん!? 朧さん!」
『ああああああっ……』
「朧さん、しっかりしてください! 朧さん!」
「大丈夫。ただ、今までの記憶が一気に蘇ってきてるだけ」
 ただ、かなりの激しい頭痛に襲われるが、と付け足す。



『ああああああっ……ああ……あああっ……!?』
 激痛に苦しむ。朧、彼女の脳内は、今まで封印されていた記憶が一気に押し戻ってきていた。

 ――――お姉ちゃん、助けてっ! お姉ちゃん!

 脳裏に妹の姿が映る。そして、イブリスの姿や、何人もの男の姿も。


『いや、離してっ! 助けて、お姉ちゃん!』
『美月! 美月に何をするの!?』
『見ていれば分かります。そう、見ていれば』
 不敵に笑うイブリス。そして、男達が妹の服を引き裂いていく。
 そう、妹は男達に取り囲まれ、イブリスによって心を壊された。
『美月! 美月!? 返事をして、美月!』
『無駄ですよ。私のドライヴは、アクティブ・ウェポンの力を現実でも使えるように改造しているのです。
 そう、こんな風に、あなたの妹の心を壊す事も』
『……よくも……よくも、美月を!』
 朧がイブリスに飛び掛る。瞬間、イブリスはドライヴを彼女の前に出した。
『デス・ハンド』
 朧の動きが止まる。
『憎悪に満ちたあなたは、ただの人形です。そう、私の操り人形……』


『……思い……出したっ……!』
 頭痛が治まり、朧がオーディーンを立たせる。そして、イブリスを睨んだ。
 飛鳥とバトルしていたイブリスが、さらに宙を舞い、静かに言う。
『洗脳が解けてしまいましたか……』
『イブリス……! よくも……よくもあの時美月を……私の大切な妹を……!』
『あれは、あなたが悪いのですよ? 私の誘いを断ったあなたが、ね』
『ふざけないで……! あなたは美月を殺し、私をダーク・コネクターの幹部に仕立て上げた……!』
 オーディーンが斬鉄剣を強く握り締める。
『あなただけは絶対に許さない……! 美月の仇は、絶対に取ってみせる!』
『それは不可能です。なにせ、私は”絶望へ誘う者”ですから』
 瞬間、セルハーツ、オーディーン、エル・センティア、獅王紅蓮姫が大地に屈する。
 イブリスによる重力制御。思い通りにドライヴが動かない。
 油断していたと思い、飛鳥が舌打ちする。そんな飛鳥に、イブリスが言う。
『一つだけ教えておきましょう。マグナム・カイザーはアサルト・ハンターには勝てません』
「そんな事……!」
『なにせ、アサルト・ハンターは自我でダーク=レガリアを自在に操れるのですから』
「な……!?」
 飛鳥が目を見開く。その時、ファルシオンセイバーが反応を示した。
 勇治の方へと視線を向ける。ディル・ゼレイクが大地に倒れる姿が見えた。
「勇治……勇治!?」
 レイ・マキシマムの手にする『レイ・スペル・ショット』の形状が違う。
 銃口が縦に三つに並び、銃身が二倍近くに伸びている。
「まさか……レイ・スペル・ノヴァ……!?」
『その通り。サタン・オブ・マグナムは、こちらの手中に収めさせて頂きますよ』
 イブリスが不敵な笑みを浮かべる。しかし、ディル・ゼレイクから勇治の反応はなかった。



次回予告

 明日香「こんにちは、明日香です」
 亜美 「亜美でーす! って、そんな場合じゃないですよ! お兄ちゃんが危ないんですよ!」
 マリア「飛鳥も動けないし、こりゃ、本当にヤバイかもね」
 明日香「……ひ、人事のように言ってますけど、この状況って危険なんじゃ……?」
 マリア「うん、大ピンチ。ま、どうにかなるでしょ?」
 亜美 「ま、マリアさん、無責任過ぎますよ!?」

  次回、CONNECT32.『魔王の降臨』

 明日香「次回はついに勇治君が本領発揮!?」
 亜美 「本領発揮って言っても、お兄ちゃん、全く反応してないですよ!?」
 マリア「大丈夫、大丈夫。そんな時こそ、主役の出番ってものよね、飛鳥?」
 飛鳥 「……って、マリアは助けに来いよ(汗)」



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