大地に倒れたディル・ゼレイク。飛鳥が何度も勇治の名を叫ぶ。 「勇治! 勇治ッ! 返事をしてくれ、勇治ぃぃぃッ!」 しかし、全く返事がなかった。気を失っているのだろうか。 ディル・ゼレイクのパワーゲージを確認する。まだ0%ではなかった。 まだ勇治は負けていない。まだ、『マグナム・カイザー』のままだ。 イブリスが言う。 『もはや、彼は戦えないでしょう。アサルト・ハンター、最後にトドメを』 『当然だ』 レイ・マキシマムが両腕を前面へと稼動させ、脚部を真っ直ぐに伸ばして合わせる。 機体全体が真横になり、大地に接する面からスラスターが出現し、宙へと浮く。 レイ・マキシマムは巨大な銃へと変形した。 バトル・フィールドの外、バトルを観ていた晃鉄が目を見開く。 「あれは、ドラウニプル・モードか……!?」 「ドラウニプル……?」 「将射のレイ・マキシマムは、巨大な銃へと変形する機構を搭載している。 その銃の名をドラウニプル。神話で登場する、9夜ごとに8つに増える腕輪の名をつけた形態だ」 「あ、あの……あの銃の形態と関係ないような気が……」 明日香が疑問に思う。晃鉄は首を横に振った。 「あの形態がそう呼ばれているのは、あの形態で開く砲門の数を言うんだ。 9つの砲門を見せる形態。その数から、あの名がついた」 「もしかして、強いんですか……?」 「……強い。威力は間違いなく、『サタン・オブ・マグナム』と互角だと言われている」 「え……!?」 ドラウニプル・モード。それは、『アサルト・ハンター』の最終兵器。 9つの砲門を開き、狙いをディル・ゼレイクへと向けた。 『これで本当に最後だ、マグナム・カイザー』 砲門全てにエネルギーがチャージされる。飛鳥はセルハーツをどうにかして立たせようとした。 勇治が立てない今、敵の攻撃を防げるのは自分しかいない。 セルハーツ達の周囲の重力を分析し、方法を考える。 まず、『バスターファルシオン』を思いついたが、この重力では解き放つ事もできない。 「重力すら上回る機動性さえ使えれば……!」 昔の事を思い出す。Bランクの頃の、制御できなかったセルハーツ。 あの時のセルハーツは、今の自分でも動かす事はできない。 しかし、他の方法が思いつかない。飛鳥が「くそっ!」と歯を噛み締める。 「このまま勇治を倒させるわけには……レガリアを奴らに渡すわけには……!」 『……この重力をどうにかする方法……』 朧がドライヴの状態を確認する。まだオーディーンは十分動ける。 斬鉄剣を使えば、この重力を断って動けるかもしれない。 『……イブリスは絶対に倒す……!』 「お兄ちゃん、起きて! お兄ちゃん!」 亜美が叫ぶ。それを聞いた朧が亜美の方を見る。 「このままじゃ負けちゃうよ! お兄ちゃん、目を覚まして! 負けないで! 飛鳥さんともう一度バトルするんでしょ!? 『マグナム・カイザー』のままでバトルするんでしょ!? 嫌だよ! お兄ちゃんが『マグナム・カイザー』じゃなくなるの、私は絶対に見たくないよ!」 『亜美ちゃん……』 朧が悩む。『アサルト・ハンター』の攻撃は今にも放たれそうだ。 オーディーンを盾にすれば、『マグナム・カイザー』は助けられる。 しかし、そうなるとイブリスを倒す事ができなくなる。 『…………』 「お兄ちゃん、起きて……! 起きてよぉ……」 『少女には悪いが、これで終わりだ。ナイン・ヘッド・ラグーン』 レイ・マキシマムの9つの砲門から、一斉に波動が放たれる。 『……!』 瞬間、朧が動いた。オーディーンが斬鉄剣にエネルギーを込め、斬鉄剣をイブリスに向けて投げる。 エヴィル・アスラフィルへと放たれた斬鉄剣。イブリスはすぐに避けたが、重力制御が解けた。 動けるようになったオーディーンが立ち上がり、大地に倒れるディル・ゼレイクをそこから吹き飛ばす。 レイ・マキシマムの射線上に入ったオーディーン。9つの波動を全て受ける。 『ああああああっ!?』 「――――朧さん!?」 朧によって、『マグナム・カイザー』は倒せなかった。イブリスが舌打ちする。 『朧め……!』 「ミラージュ・ブレイドォォォッ!」 刹那、エヴィル・アスラフィルの右肩をセルハーツが両断した。 動けるようになった瞬間に飛鳥は動いていた。 『な……ソード・マスター……!?』 「イブリス、これで終わりだ!」 『……くっ』 エヴィル・アスラフィルが消える。あのイブリスが撤退した。 すぐに勇治の方を見る飛鳥。ディル・ゼレイクは無事だった。 「勇治は無事……!? けれど、朧……!」 あの攻撃を受けて、オーディーンが平気だとは思えない。 レイ・マキシマムの攻撃によって、オーディーンは胸部以外の全てを破壊された。 転がり落ちるオーディーンの胸部。亜美のエル・センティアが胸部を拾い上げる。 「朧さん、しっかりしてください! 朧さん!」 『……どうして、でしょうね……? あなたが悲しむ……姿を見たくないって思った……』 「え……!?」 『あなたは妹に……美月に似てる……だから……』 朧が微笑む。 『……だから、あなたの力になりたいって思えた……』 「朧さん……」 『大丈夫……あなたのお兄さんなら、きっと勝てる……から……』 オーディーンの胸部が消えていく。亜美が目を見開いた。 「お……朧さん……!? 朧さん!? 消えちゃ嫌だよ、朧さん! 朧さぁぁぁぁぁぁんっ……!」 涙が流れる。それを見た飛鳥が優に叫んだ。 「優さん!」 「分かってる。妹ちゃんと一緒にコネクト・アウトして、朧はどうにかしとく」 「お願いします」 意識が蘇る。まだバトル・フィールドにいるらしい。 ディル・ゼレイクは辛うじて生き延びているようだ。 「……あ……み……」 妹の名を小さな声で呼ぶ。その時、泣き声が聞こえた。 「……亜美……なぜ泣いている……?」 何が起きたか分からない。しかし、間違いなく妹は泣いている。 ――――誰が泣かした? 誰が亜美を泣かした? 目の前に見えるのは、『アサルト・ハンター』のドライヴ。 ――――奴か。奴が亜美を泣かしたのか。 ディル・ゼレイクがサタン・オブ・マグマムを強く握る。 ――――よくも亜美を泣かしたな。貴様だけは許さない……! ――――そう、貴様だけは絶対に……! よくも……よくも亜美を…… 「――――亜美を泣かしたなぁぁぁぁぁぁっ!」 ディル・ゼレイクが立ち上がる。サタン・オブ・マグナムが黄金に輝いた。 銃身が若干伸び、銃口が大きく開く。開いた銃口から、禍々しい銃口が姿を見せた。 ファルシオンセイバーが反応し、飛鳥も嫌な感じに襲われた。 ディル・ゼレイクが立ち上がっている。データを確認しつつ、飛鳥が目を見開く。 「射撃攻撃力がいつもの数十倍……!? って、まさか……」 「……よくも亜美を……俺の妹を泣かしたな……! よくも……よくもっ……!」 「……思いっきりキレてるし……。しかも、サタン・オブ・アブソリュートかよ……」 黄金の輝きを放ち、禍々しい銃口を持った『サタン・オブ・マグナム』の真の姿。 勇治の状態から、この場にいるのは危険だと飛鳥が判断する。 途端、優が飛鳥に訊いて来た。 「あすあす、ゆうゆうってばキレてる? 初めて見たんだけど」 「……思いっきりキレてますよ。そりゃもう完璧に」 「ゆうゆうのシスコン度は凄いわね〜。とにかく、こっちは妹ちゃんとコネクト・アウトするから」 「お願いします。俺は、先の事を考えて、ここに残りますんで」 「ま、勝負はついたでしょ。無事生き残りなさいね、あすあす」 そう言って、優の獅王紅蓮姫が亜美のエル・センティアと共にコネクト・アウトする。 優の言葉に飛鳥は苦笑した。確かにその通りだからだ。 飛鳥が危険だと判断したのは、勇治と相手のバトルによる被害と言うわけではない。 危険なのは、勇治が見境なく攻撃する状態になっているからだ。 「……ったく、亜美ちゃんの事でキレるなって前に言ったのに」 肩を落とす。勇治のあの状態を見るのは、これで二度目だ。 前も亜美の事で怒り、見境ない状態だったのは言うまでもない。 「さて、しばらく様子を見るか。このバトルは、どうせ勇治の勝ちだしな」 立ち上がったディル・ゼレイク。『アサルト・ハンター』が少しだけ笑みを浮かべた。 レイ・マキシマムがドラウニプル・モードから人型へと戻る。 面白い。まだ戦うと言うのなら、こちらも容赦なく相手をしてやる。 『グランドクロス・ショット』 レイ・スペル・ノヴァから銃弾が十字のになって放たれる。 勇治がそれを鋭く睨みつけ、サタン・オブ・アブソリュートが銃声を轟かせた。 十字状に放たれた銃弾全てを一発で撃ち落し、連続でもう一発撃つ。 『アサルト・ハンター』が襲い掛かる銃弾の中心点を見抜き、そこを狙って撃つ。 しかし、襲い掛かる銃弾は散る事無く、レイ・マキシマムの右肩を奪い去った。 『な……!?』 「貴様は亜美を泣かした……! 貴様だけは絶対に許しはしないッ……!」 勇治が睨みつける。それに応えるかのように、ディル・ゼレイクのカメラアイが一瞬だけ強く光る。 サタン・オブ・アブソリュート。それは、絶対的な貫通弾を撃つ最強の銃。 全てを断つ力を持つ『バスターファルシオン』と並ぶ脅威の『ドライヴ=レガリア』。 もはや、『アサルト・ハンター』はその銃弾を撃ち落す事はできない。 怒りに満ちた勇治の反撃は、ここからだ……! 次回予告 明日香「こんにちは、明日香です」 飛鳥 「飛鳥です」 明日香「勇治君って、怒ると凄いんだね……」 飛鳥 「と言うより、危険だな。敵味方関係なく攻撃してくるし」 明日香「……怒らせたらダメって事だね」 飛鳥 「……だな」 次回、CONNECT33.『友情の天翔蒼破絶靭斬』 飛鳥 「次回は、ついに『アサルト・ハンター』との決着!」 明日香「けど、タイトルからすると、飛鳥君がメインな感じが……」 飛鳥 「そりゃ、俺が主役だから」 明日香「……どうせなら、私の出番増やして欲しいのに……」(←妙に出番の少ないヒロイン) 飛鳥 「それは作者に言わないと。なぁ、作者?」 ※……訊くな。 |
<< CONNECT31. CONNECT33. >> 戻る トップへ
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||