CONNECT45.『ジャッジメント・ウィザード』


 セルハーツの構築データを『ダーク・コネクター』から奪われて3日後。飛鳥は毎日調整を行っていた。
「……これが限界か。いつもの10%くらいしか性能を引き出せない……!」
 どれだけ調整しても、セルハーツの本来の性能を完全には引き出せなかった。
 セルハーツと言うドライヴの10%。これが、今のセルハーツだった。
「構築データをどうにかして取り戻さないと……今のままじゃ、セルハーツは弱い……」
 この状態で『ダーク・コネクター』と戦ったとして、勝てるかどうか分からない。
「くそっ……どうするよ……?」
「グロウファルコン使えば良いのに」
 そして、頬に冷たいものを当てられる。飛鳥がビクッと反応した。
 その反応を見て、彼女が笑う。
「3年前から変わってないね」
「こ、こよみさん……いきなり何するんですか……」
「たまたま寄ってみたら、飛鳥君の姿見つけて、つい」
 そう言って、頬に当てた冷たい缶ジュースを飛鳥に渡す。
「差し入れ。これで一息入れてみたら?」
「うわ、まだあったんだ。このコーラフロートジュース……」
 3年前に飲んで、かなり微妙だった事を思い出す。
 コーラフロートジュース。コーラの甘さにアイスクリームの甘さが混ざった、とても甘い飲み物。
 当然、甘い物が苦手な飛鳥にとって、かなり苦痛の飲み物である。
「……こよみさん、これ好きなんですか?」
「ううん」
「じゃあ、何で?」
「優さんから聞いたんだよ? 飛鳥君はコーラフロートジュースが死ぬほど大好きって」
「……優さん、なんて嘘を……」
 やはり、先代『マグナム・カイザー』には、どうやっても勝つ事が出来ない。色々な意味で。
「話は戻すけど、そんなに今のドライヴが調子悪いなら、グロウファルコン使ったら?」
「いきなり話を戻しましたね……けど、グロウファルコンを使う気はありません」
 そう言って、セルハーツのドライヴを握る。
「グロウファルコンじゃダメなんです。セルハーツじゃないと」
「どうして?」
「セルハーツは、今の俺に合わせて調整したドライヴなんです」
 どんなに本来の性能が引き出せなくても、セルハーツでなければいけない。
 それは、飛鳥のこだわりでもあった。



 同時刻、勇治はゴウ、カリスと共に行動していた。
『ダーク・フォース』の反応があったバトル・フィールド。しかし、静けさだけしかない。
「…………」
「すでに逃げられたか……」
「ここのところ、ずっとですね……いつも反応があると思ったら逃げられていて……」
 そう、ここ最近の『ダーク・フォース』の動きは妙だった。
 反応があったと思ったら消えている。この状態が続き、一瞬たりとも姿を見る事が出来ない。
 勇治が歯を噛み締める。
「くっ……」
「流石の勇治も苛立っているようだな。そろそろ、本格的な動きがあると思っているが……」
「ある」
「何……?」
 勇治の一言にゴウが反応する。
「訳の分からない行動を取っている時点で、奴らはすでに動いている」
「確かにそうだが、こうも意味不明な行動ばかりでは、どうしようもない」
「…………」
「今は耐えるんだ。その時はいずれ来る」



 翌日、自宅近くのショップ。セルハーツでシミュレートを開始し、飛鳥は瞳を鋭くした。
『鷹の瞳』がシミュレート用の敵ドライヴの攻撃を見切る。
「……耐えろよ、俺!」
 コンピュータを操作し、セルハーツのカメラアイが光る。
 プラズマセイバーを構えたセルハーツが敵ドライヴを薙ぎ払った。
 そして、瞬時に警告が鳴る。飛鳥はやはり、と舌打ちする。
「どうにか使えても、一度か二度が精一杯だな……?」
 そう思った時、つうっと汗が流れ落ちる。自分が汗を掻いているのに今気づいた。
「……おいおい、あれだけでこれかよ……。けど、気づかなかったって事は……」
 今までよりも集中していた、と言う事になる。飛鳥は思わず苦笑した。
 確かに、何かに没頭して集中する事が良くあるが、シミュレートではそうはいかなかった。
 本来の強さを引き出せないとは言え、やはりセルハーツは3年前と変わっていない。
 間違いなく厄介なドライヴ。そう痛感させられる。
「やっぱり、お前はパワーアップする必要がないのかな、セルハーツ?」
 そう訊く。しかし、当然答えは返って来ない。その時、ドライヴがアラームを発した。
 レガリアが強い反応を示す。
「……こんな時に限って……! 場所は――――!?」
 瞬間、大地から巨大なドライヴが姿を見せる。
 ゲームで登場するような巨大な竜――――勇治が言っていたバハムート。
「勇治が言っていた通り、結構巨大なドライヴだな、おい……!」
 ファルシオンセイバーを構える。バハムートが口から炎を吐いた。セルハーツが跳躍する。
「エアブレード!」
 風の刃を放つ。バハムートがその爪で弾いた。
 咆哮を上げ、翼を広げて空へと舞い上がるバハムート。セルハーツがゴッドランチャーを構える。
 刹那、セルハーツの真下の大地から、もう一体のドライヴが姿を見せた。
 蛇のように長い身体を持つリヴァイアサン。飛鳥が目を見開く。
「2体だと……!? くそ、間に合わない……!」
 リヴァイアサンがその口を開いてセルハーツへと襲い掛かる。否、吹き飛ばされた。
 同時にバハムートが弾幕の嵐に包まれる。
「勇治、ゴウさん……!」
「ようやく姿を見せたな。一気に蹴散らしてくれる……」
「早くも時が訪れた。カリス、君は俺の援護を!」
「はい!」
 バハムートとリヴァイアサンが3体のドライヴに攻撃される。セルハーツがディル・ゼレイクの隣に立つ。
「早かったな……近くにいたのか?」
「相手が相手だからな。弱くなってるお前を狙うと思っただけだ」
「なるほど……。それで、『フォース・コネクター』三人で動いてたのか?」
「いや、勝手について来た
「勝手について来たって、お前な……」
「それより、一気に倒すぞ。あいつも、そろそろ終わるはずだ」
「そうだな。勇治、あれを試すぞ。新しい奴を」
 勇治が頷く。セルハーツとディル・ゼレイクが別々に動いた。
「フラッシング! ミラージュ・ブレイド! 零距離ッ!」
 三つの技を連続で放ち、バハムートを吹き飛ばす。
「フレアマグナム、ツインゴッドランチャー」
 同じく、ディル・ゼレイクも連続で攻撃し、リヴァイアサンを吹き飛ばす。
 吹き飛ばされたバハムートとリヴァイアサンが互いに衝突し、動きが止まる。
「『スキル・プログラム』セットッ! フレイム・クロス・ブラストッ!」
 バハムート、リヴァイアサンの両側から同時にビームを撃つ。見事、呑み込まれた。
 互いに親指をグッと立てて合図を送る。
「タイミングはバッチリだったな」
「何を言う、俺が合わせてやったんだ。お前のドライヴが弱いからな」
「良く言うぜ。普段、人には合わせないくせに」
「ふん」
「流石は『ソード&マグナム』ですね! まさか、あの2体を倒すなんて!」
 カリスがパチパチと手を叩く。飛鳥と勇治は互いの顔を見て頷いた。
 そんな事など知らず、カリスが二人に近づく。瞬間、飛鳥がカリスへと剣を向けた。
 飛鳥の突然の行動に目を見開くカリス。
「いつまで芝居を続ける気だ、カリス? いや、『ジャッジメント・ウィザード』!」
「い、いきなりなんですか……!? ぼ、僕は……」
「しらばっくれるな。お前が『ダーク・フォース』だと言うのは分かっている」
 そう言って、勇治が銃を突き向ける。
「二人とも、こんな時に何を……!?」
「こいつの持っているレガリアは『ワイヴァーン・ウイング』じゃない」
「違うって……どう見たって、これは……」
「見た目は『ワイヴァーン・ウイング』に似ているだけのアクティブ・ウェポンだ」
 勇治がドライヴを操作する。ディル・ゼレイクの背中から竜の翼が現れた。
『ストーム・クラウン』の証であるドライヴ=レガリア。それを見たゴウが目を見開く。
「ワイヴァーン・ウイング!? なぜ、それを勇治が……!?」
「カリスがマリアに勝ったあの日、ワイヴァーン・ウイングは勇治のドライヴに入って姿を隠した」
「レガリアはお前の正体など、とっくに分かっていたと言う事だ」
「そして、お前が持っている偽物こそ『ダーク=レガリア』……そう、キメラ・ウイングだ」
 唯一、形状だけワイヴァーン・ウイングに似ている『ダーク=レガリア』。
 飛鳥が話を続ける。
「俺と勇治は、お前が『ダーク・フォース』だと分かった時点で、お前を少し泳がせた。
 ゴウさんに伝えてなかったのは、お前に俺達が気づいている事を隠す為。
 敵を欺くには、まず味方からって言うからな」
「待て、飛鳥。だったら、レガリアが2体のドライヴに反応したのはなぜだ?」
「それは、あの2体に違法ウェポンでも搭載しているからですよ、ゴウさん」
「……はは……あははははははっ!」
 カリスのメシア・オブ・カイルスが翼を広げ、空へと舞い上がる。
「まさか、気づかれていたなんてね……。流石は、『ソード・マスター』に『マグナム・カイザー』だ」
 メシア・オブ・カイルスの右手が振り上げられる。
『だったら、名乗る必要なんてないね。ジャッジメント・ウィザードの強さ、思い知らせてあげるよ!』
「やれるものなら、やってみろ。お前は俺が倒す」
 ディル・ブラストのカメラアイが一瞬だけ光を増す。瞬間、バハムートとリヴァイアサンが復活した。
 飛鳥が舌打ちする。
「チッ、やっぱり搭載してたか、リバイヴシステム! 破壊できたと思ったんだがな……!」
『あれ位のスキル・プログラムじゃ僕のバハムートとリヴァイアサンは倒せないよ。
 ふふふ……覚悟してもらうよ、フォース・コネクター!』
「何度も言わせるな。やれるものなら、やってみろ」
 勇治が瞳を鋭くさせる。『マグナム・カイザー』は、内に秘めた怒りを見せた。



次回予告

 明日香「か、カリス君が『ダーク・フォース』だったんだ……」
 飛鳥 「そ。まぁ、レガリアのお陰で分かったんだけどね」
 勇治 「奴は俺が倒す。絶対に邪魔するな」
 飛鳥 「分かってるって。第一、今回はまともにバトルできそうにないしな、俺の場合」
 明日香「ゆ、勇治君が燃えてる……」

  次回、CONNECT46.『戦乙女、それは白銀の翼と共に』

 明日香「次回はあの人が登場!」
 飛鳥 「あの人って誰?」
 明日香「タイトルから分かるって、作者さんが……」
 飛鳥 「となると、白銀の人か……って事は、紅蓮の薔薇も……」
 勇治 「……あの悪夢再来か」
 飛鳥 「……思い出したくないな、マジで」
 明日香「あ、あれ……?」
  ※過去に何かあった様子なソード&マグナム。それが何なのかは秘密(待



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