CONNECT17.『最強チームの危機』


『ランドライザー・コマンド』はこの日、トレーニングをしていた。
 新『ディフェンド・キング』である佐々木晃鉄を相手に、主力メンバーが攻撃を開始する。
「赤光!」
 まずは、新チームリーダーとなった紅葉。繰り出される高速の突き。
 早くも回避し、カウンターの態勢に入る。
「おっと、後ろにもいますよ!」
 そう言って、一体のドライヴが攻撃を仕掛ける。
「それ位、分かっていた」
 左腕の盾で受け止められる。
「グラビティ・プレッシャー」
 そのまま、左腕の盾から重力フィールドが発生し、殴られる。その瞬間を紅葉が狙った。
 紅葉のクリムゾン・ティアーズが接近する。
「赤光!」
「甘い!」
 持っている武器で受け止められ、カウンターを受ける。



 チーム全体のトレーニングが終わって、晃鉄は溜め息をついた。
『ディフェンド・キング』であり、チームのリーダーだったゴウが引退して以来、チームに覇気が無い。
 それは、新リーダーとなった紅葉を見れば一目瞭然だった。
「紅葉、さっきの戦い方は何だ? リーダーとして指示も上手く出せていない」
 怒る。晃鉄の言葉に、紅葉は申し訳なさそうに顔を俯かせるだけだった。
『ソード・マスター』蓮杖飛鳥とゴウのバトルから半年以上。チームにいた優秀なコネクターには、脱退する者もいた。
 脱退する理由は一つ。ゴウボーグ=レンダリムと言う憧れの存在がいないから。
 それだけ、ゴウの存在は大き過ぎた。誰もが憧れ、そして慕っていた存在だったが為に。
「……やはり、自分にリーダーなんて大役は……」
「またその話か……先輩は、お前にリーダーの座を任せた。お前がチームのリーダーに相応しいと思ったからだ」
「そんな事……自分はリーダーがいないと……」
「まーだスランプ脱出ならずですかね……」
 と、気づけば隣で水分補給をしていた男がいた。
 ごく平凡な顔の男。晃鉄がその頭上に拳を振り下ろす。
「痛っ!? な、何するんスか!?」
「お前もお前だ。今回は、守りの主力メンバー不在を想定したトレーニングだと言ったはずだ。
 それを考えも無しに突撃して……それでも、俺の後継者か?」
「……すみません。この阿藤輝(あとう てる)、大変反省しております」
 その直後、再び拳が頭上に振り下ろされる。どう見ても、彼には反省する様子が全く見られない為に。
 阿藤輝。『ランドライザー・コマンド』の新サブリーダーにして、晃鉄の後継者。
 紅葉同様、ゴウに憧れてチームに入った一人であり、その実力と戦い方から、晃鉄に気に入られた。
 そんな輝が痛みが走る頭を両手で押さえる。
「いや、いつものバトルの癖が……ほら、ゴウさんが引退する前は、どちらかと言うと突撃専門でしたし……」
「お前と言う奴は……この調子では、今度のバトルも勝てそうにないな」
「ん、バトル?」
「そうだ。今度、『チーム・アレス』にバトルを頼んでいる。俺を除いた主力4人で」



「で、何だよ、この包囲網は……」
 同時刻。飛鳥は教室で四方を囲まれて逃げられなかった
 隣の席に座る『チーム・アレス』の黒石曜が謝る。
「ごめんなさい、美里さんがどうしても蓮杖君にお願いがあるって……」
「言っておくけど、お前らのドライヴのパワーアップとかは受けないぞ。自分のチームの事もあるし」
「そこをどうにかお願い! 私達と蓮杖君の仲でしょ!?」
「どんな仲だ……」
 大滝美里から話を聞く。なんでも、『ランドライザー・コマンド』からバトルを申し込まれたとか。
「別に問題無いだろ。トーナメント戦じゃないし、負けても総合ランクは落ちないし」
「何言ってるの!? 相手が相手なのよ!?」
 最強チームの一角、『ランドライザー・コマンド』。
 いくら、最強と言われた『ディフェンド・キング』が引退しても、その強さは健在しているはず。
「それに、もし今回勝てれば、トーナメント戦でも上位に入れる自信がつくわけよ!」
「って言ってもなぁ……最近の『ランドライザー・コマンド』は……」
 成績不振。そう、最近の『ランドライザー・コマンド』のバトルは敗北が多かった。
 理由は一つ。『ディフェンド・キング』だったゴウが引退したから。
 現在の『ディフェンド・キング』である晃鉄がいる場合は、問題無くバトルしても勝利しているらしいが、
 彼が不在のバトルでは、その強さを発揮できていないと聞く。
「大体、何をどうしたいんだよ?」
「よくぞ聞いてくれました! 私としては、こうしたいのよ!」
 そう言って、大滝美里がノートを取り出して飛鳥に見せる。ドライヴの絵が書いてあった。
「キシンには新しい実体剣で、ローズウェルも新カスタムパーツを作って、オーディンとヘイムダルには……」

「却下」

 即答だった。
「何で!?」
「銀麗と天閃以上に出来の良い実体剣は時間が掛かるし、ローズウェルのカスタムパーツはコストが高過ぎる」
「そ、それは……」
「オーディンとヘイムダルは個々でパワーアップさせると、どうしても『スキル・プログラム』でズレが出る」
「た、確かに……」
「私達のドライヴについて、美里より蓮杖君の方が詳しいんだけど……」
「美里ちゃん、大ピンチ〜」
 飛鳥の言葉に小さくなる大滝美里。その様子を見てるだけの天鷹姫里と千里。
 飛鳥が席を立ち、ドライヴで時間を確認する。
「もうこんな時間か……用事があるから、俺は帰るぞ」
「ち、ちょっと待って! 蓮杖君、お願い! これ消すからお願い!
 そう言って、大滝美里が出したのは、ドライヴでいつの間にか撮影した写真だった
 飛鳥が年下と思われる女子と親しげに会話している写真。それを見た飛鳥が、ああ、と頷く。
「それ、メンバーの瑞樹との写真だな
「え、知り合い!?」
「うん。明日香も知ってるぞ。じゃ、またな」
 大滝美里の狙いは、呆気なく散った。



 数日後。一人、喫茶店に入って彼らの様子を見ている男がいた。
 先代『ディフェンド・キング』であるゴウだ。
「ふむ……」
 行われているバトルの様子を見る。引退したものの、やはりチームが気になって仕方ない。
 しかも、最近の成績不振の話を聞いては、尚更だった。
「今日の相手は確か……」
『チーム・アレス』。総合ランクはA。戦力的には『ランドライザー・コマンド』の方が有利だ。
 しかし、現在のチームの成績を知ったゴウとしては、不安があった。
 普通なら勝てる相手である事は間違いない。普通なら。
「各人の実力は問題無い。あとは……」



 バトル・フィールド。行われているのは、『ランドライザー・コマンド』VS『チーム・アレス』。
 突出して先陣を切る『チーム・アレス』のキシンが、攻撃を仕掛ける。
『飛燕・乱舞!』
 放たれる無数の真空刃。隙を突かれた二体が早くも倒された。紅葉と輝が目を見開く。
「早くも2人を……!?」
「敵さん、強いねぇ……同じSランクは伊達じゃないって事か」
「悠長な事を言ってないで、反撃します!」
「了解。俺がこいつの相手で良いのか?」
「何を言っているんですか! あなたは後方の3人をお願いします! あのドライヴは私が相手をします!」
 紅葉の言葉に、輝が驚く。
「相手をするって……相手はSランクだぜ? 大丈夫なのか?」
「心配いりません!」
「いや、待てって!」
 輝の言葉を無視し、紅葉が突撃する。輝が心底呆れていた。
 どう見ても、実力的に紅葉は不利だ。ランクも違えば、ドライヴの性能も違う。
 なにより、向こうの方が攻撃に鋭さがある。
「……ったく、晃鉄さんからの言い付けがなければ、止められるんだけどなぁ……」
 そう、実力としては、輝は紅葉よりも断然上だった。
 同じように『ディフェンド・キング』に憧れた者ではあるが、彼には晃鉄と言う師がいる。
 だからこそ、輝は強い。晃鉄の後継者として、次の『ディフェンド・キング』になる為に。
 そんな輝であれば、『チーム・アレス』のキシンと互角以上に渡り合えるだろう。
 しかし、彼には言い付けがあった。今回のバトルにおいては、紅葉の指示に従うようにと。
「いくら、紅葉のリーダーとしての器のテストとは言え、相手が悪かったんじゃないか、今回?」
『ラグナロク!』
「え……!?」
 そんな事を言っているうちに、攻撃を受ける。気づけば、輝は呆気なく倒されていた
 遠くからライフルを構えていたと思われるドライヴ。
「……なるほど、『レア・ウェポン』か……うん、俺も降参で」
 諦めが早かった。



 紅葉がキシンに挑む。キシンを駆る曜は、感覚を研ぎ澄ませた。
『飛燕!』
「無駄です、赤雨!」
 放たれた真空刃を無数の突きで受け止め、紅葉が攻撃を続ける。
「紅華!」
 シールドを投げつけ、内部からミサイルを撃つ。煙幕となり、キシンの動きを止めた。
 好機を見出した紅葉が駆ける。しかし、曜も攻撃を読んでいた。
 接近する紅葉の動きを見極め、両手の刀と剣をそれぞれ腰の鞘へと戻す。
 そして、キシンが紅葉の攻撃を回避する。紅葉は目を見開いた。
「そんな……!?」
『奥義……瞬っ!』
 一瞬にして、抜刀が繰り出される。17もの斬撃が刻まれた。
 敗北する紅葉。それは、まさしく『ランドライザー・コマンド』の敗北だった。



 バトル終了。その結果は、『チーム・アレス』にとっては思いもよらない結果だった。
 なぜなら、相手はあの『ランドライザー・コマンド』だ。
 蓮杖飛鳥と言う強い助力も無い状態で勝てた彼女達――――特にリーダーの大滝美里は大喜びだった。
「やった、やった! 勝ったわよ!」
「まさか勝つなんてねぇ……ほとんど曜の独壇場だったけど」
「でも、『スキル・プログラム』も成功したねぇ〜」
「…………」
 しかし、肝心の曜は納得がいかなかった。これが最強のチームの強さとは思えなかった為に。
 そしてそれは、『ランドライザー・コマンド』の参謀である晃鉄も同じだった。
「総合Aランクのチームに負けるか……」
 これで結論に至った。今の紅葉には、チームのリーダーとしては相応しくないと言う事が。
 今まで勝利してきたバトルでも、主に自分が参戦していたのが要因だ。
『ディフェンド・キング』が不在だった場合の『ランドライザー・コマンド』では、まともにバトルできていない。
 理由は一つ。チームとしての統率力の低さ。
「……公式トーナメントまでに、この問題を解消しなければいけないな」
 そうしなければ、このチームでは今年の最強のチームを名乗れない。



 バトルを見ていたゴウは、一人溜め息をついた。
 明らかに弱い。その原因も分かっている。
「もう少し、彼女の為に時間を用意していた方が良かったのかな……」
 引退の時期が早過ぎた。それは、間違いなく自分の責任だった。
 誰もが予想していなかった引退。その戸惑いがチームを狂わせてしまった。
 特に、サブリーダーだった紅葉を見れば分かる。
「さて、どうしたものか……」
 引退した今だからこそ、手出しできない。しかし、チームが今の状態になった責任もある。
 ゴウの葛藤は続いた。



次回予告

 明日香「だ、大丈夫かな、『ランドライザ・コマンド』……」
 飛鳥 「大丈夫だよ。晃鉄さんもいるし、元々が強いメンバーの集まりだし」
 明日香「そ、そうだよね……」
 飛鳥 「そうそう、きっと大丈夫だって」
 明日奈「それより、今回の主役は違っていたような気がするのだけれど」
 飛鳥明日香『あ……』
  ※ごめん、今回の主役は『チーム・アレス』かも(殴

  次回、CONNECT18.『真なる継承を』

 ゴウ 「やはり、僕の出番のようだね」

 明日香「次回は、ゴウさんの熱血大特訓!」
 飛鳥 「特訓になるのかな……ゴウさん、特訓でも本気出して容赦無いし」(← 一度経験済み)
 明日奈「それより、今回の新キャラについてもスルーで良かったのかしら?」
 明日香「えっと……」
 飛鳥 「目立たないな、後継者……」
  ※まぁ、後継者なので(汗



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