CONNECT20.『最後の一人』


 最強トーナメントの申込みの期日が発表された、そんなある日。飛鳥は難しい顔をしていた。
「……ダメだ、他を当たろう」
 と、目の前で行われていたバトルを見て言う。様々なショップを転々と回っていた。
 理由は一つ。チームに最後の一人となるメンバーをスカウトする事。
 しかし、目当ての人材が見つからない。
「どうしたものかな……ほとんど目星のあったコネクターは、外れだったり断られたりだし」
 こうなると、最悪はガルノアを最後のメンバーとしてトーナメントに申込みを行うしかない。
 そうやって悩んでいると、後ろから声を掛けられた。
「ここで何をやっている?」
「何って、メンバー探しに決まって……?」
 振り返る。会いたくなかった相手がそこにいた。
 チーム『ゾディアック』のリーダーにして、『フォース・コネクター』級の実力を持った男・桐生彰。
 咄嗟に、飛鳥がドライヴを構える。桐生は軽く笑いながら、首を横に振った。
「バトルする気はない。だが、ここで会ったのは好都合だ。お前には話があったからな」
「話?」



 明日香達『レザリオン』のメンバーは、いつものようにショップでトレーニングを行っていた。
 呆気なく明日奈に倒される歩を見て、瑞穂が溜め息をつく。
「歩、本当に進歩無さ過ぎ……」
「…………」
「まだ分かって無いみたいね。飛鳥がブライト・オブ・ボルテッカを渡した理由」
 明日奈が呆れる。何も言えない歩は、激しく落ち込んだ。
「……俺、何でこのチームに入ったんだろ……」
「スカウトされて嬉しかったからでしょ、飛鳥さんに」
「う……」
「本当、先が思いやられるわ……」
 これのどこが、飛鳥の考える最強のチームなのか、飛鳥本人に訊きたいところだと明日奈は思う。
 しかし、飛鳥の考えには必ず何かがある。だからこそのメンバーでもある。
「そう言えば、今日はあの男は?」
「蓮君? 蓮君なら、今日は飛鳥君に頼まれてアクティブ・ウェポンを買いに行ってるはずだけど……」
「アクティブ・ウェポン? 別に買わなくても作れば良いんじゃないのかしら、飛鳥の場合」
「うん。でも、今後の為に必要だからって、飛鳥君が」
 飛鳥の考えている事が分からない明日香と明日奈だった。



「『ゾディアック』を解散した!?」
 ショップ内の喫茶店に移動した飛鳥は、桐生の話を聞いて驚いていた。
「解散って、トーナメントの開催も近いのにか?」
「ああ。あるチームに負けた事が原因でな」
 桐生が話を進める。
「俺が不在の時に、『ゾディアック』は敗北した。その時にメンバーのほとんどが相手チームに移った」
「チームを移った? 一体、どこのチームに?」
「『クルセイド』……」
「な……!?」
 チーム『クルセイド』。ほとんどのメンバーが一度はSRランクを経験した上級者が多いチーム。
 しかし、なぜか知らないが、公式トーナメントには出場せず、様々なチームとバトルを繰り返している。
「まさか、『クルセイド』が……」
「バトルを見ていないが、俺以外のSランクでも勝てないほどの実力だ」
「……けど、何で今更『ゾディアック』と? 公式トーナメントにでも出るつもりか?」
「それは俺にも分からない。だが……」
 桐生が拳を強く握る。
「俺としては納得出来ていない。俺抜きでバトルしている時点で、奴らは必ず俺が倒す」
「待て、桐生。いくらお前でも、一体で複数のSランクやSRランクは分が悪過ぎる」
「分かっている。それでも、やるだけだ」
「だったら……」
 途端、飛鳥のドライヴに着信が鳴る。メールの着信だった。
 話を折られた桐生が溜め息をつく。メールを見た飛鳥が立ち上がった。
 桐生にメールの内容を見せる。桐生の目が大きく開く。
「これは……!?」
「行くぞ、桐生。奴らの今度の狙いは、『レザリオン』みたいだ」



 飛鳥が桐生と話をしている時、チーム『レザリオン』はそのチームにバトルを申し込まれた。
「バトルくらい、別に問題ないだろ?」
「そう言っても、一応飛鳥君……チームリーダーも一緒に話をしないと……」
「良いじゃねぇか。サブリーダーなんだろ? それ位の判断はできるだろ?」
「そ、そうだけど……」
 明日香が戸惑う。後ろから見ていた明日奈が割り込んだ。
「ごめんなさいね、一応こっちはリーダーが決めるようにしているから」
「それこそおかしいんじゃないのか? それに、そんなチームよりこっちの方が気が楽だぜ?」
「あら、それはお生憎様ね。チーム『レザリオン』は、どのチームにも負けない、最強のチームよ」
 挑発する。明日奈の言葉に、明日香はさらに戸惑っていた。
 事の発端が良く分かっていない蓮が、歩と瑞樹に訊く。
「何でこんな事になってんだ?」
「そう言えば、あんたはいなかったんだっけ。トレーニング中に、あいつらがバトル申し込んで来たんだよ」
「確か、チーム名は『クルセイド』……だったはずですけど」
「そのチームって、あんまり良い噂聞かねぇとこだな、確か。飛鳥が来るのを待った方が良いな」
「そうだと思って、すでにメールしていますけど……」
「うん。お陰で間に合った」
 気づけば、飛鳥が隣にいた。瑞樹が驚く。
「飛鳥さん、いつの間に!?」
「ついさっき。まさか、『クルセイド』がうちを狙って来るなんてな」
「とっとと話をつけるぞ、蓮杖」
「ああ」
「って、あんたは確か『ゾディアック』の……!?」
 桐生の姿に、歩が驚く。そんな歩を無視し、飛鳥と桐生が『クルセイド』のメンバーの前に立った。
 それを見た明日香が安堵の息をつく。
「飛鳥君……」
「待たせたな、明日香。で、バトルの内容は?」
「それが……」
「バトルは7対7のキューブバトル。ハンデは無しでな」
 チーム『クルセイド』の男が言う。聞いた飛鳥が「何だと?」と反応した。
「ハンデ無しのキューブバトル? なるほど、そう言う事か」
「ん?」
「悪いが、その内容で受ける事はしない。やるなら、7対7の総当たりだ」
「総当たりだと? それだと、こっちの目的が――――」
「馬鹿野郎! それは内緒の話だ!」
「……ッ!」
 チーム『クルセイド』が舌打ちしつつ、「良いだろう」と答える。
「バトルは7対7。その代わり、お前だけはハンデ有りにしろ、蓮杖飛鳥」
「ああ。俺はパワーゲージ半分で十分だ。いや、全性能半減でも良い
「飛鳥君!?」
「面白い、じゃあバトルといこうじゃないか」
「いや、バトルは明日だ」
「明日だと?」
 相手が首を傾げる。飛鳥は頷いた。
「そうだ。悪いけど、セルハーツを調整しないといけないからな」
「チッ、仕方ねぇ……明日、必ずバトルしろ。良いな?」
「ああ。明日、この時間にここでバトルだ」
 その言葉に、チーム『クルセイド』が撤退していく。明日香と明日奈が飛鳥に近寄った。
「飛鳥君、いくらなんでもハンデが大き過ぎるよ!」
「それに、七人目はどうするの? 明日までに用意できるの?」
「大丈夫。七人目なら、そこにいるから」
 そう言って、飛鳥が桐生の前に立つ。そして、ポケットからメモリースティックを取り出した。
 金色のラインが入っている黒色のメモリースティック。桐生がそれを見て訊く。
「何だ、これは?」
「お前用の武器だ。チーム『レザリオン』のメンバーとしての」
「必要無い。キング・ゾディアックなら、どんな相手にも負けないのは知っているだろう?」
 桐生の言葉に、飛鳥が首を横に振る。
「悪いけど、キング・ゾディアックは使わせない。あれはチームとしてはバランスが悪過ぎる」
「ベルセルクで戦えと言うのか?」
「ああ。巨大な獣型より、人型の方がお前は強い」
「良いだろう。この武器、使わせてもらうぞ」
 メモリースティックを受け取る。飛鳥が小さくガッツポーズを取り、メンバーに告げた。
「明日のバトルは俺、明日香、明日奈、蓮、歩、瑞樹、桐生の七人だ。必ず勝つ為にも、これからミーティングだ」
「ちょっと待てよ! 相手の強さは!?」
 歩が訊く。飛鳥はすぐに答えた。
「チーム『クルセイド』の総合ランクはSだ。『レザリオン』は総合Aでそんなに変わらない」
「んな訳ねぇだろ!? Cランクの俺とかが勝てる訳ねぇだろ!」
「勝てる。何の為に特訓していたと思っているんだ。そろそろ、ちゃんと教えてやるよ。皆に渡した武器について
 飛鳥の言葉に、全員が飛鳥を見る。
 チーム『レザリオン』のメンバーとしての証と言う事で渡された武器。あまり説明が無かった武器。
「全部ミーティングで話す。とりあえず……俺の家に行くか」



次回予告

 明日香「まさかの、最後のメンバーだね……」
 飛鳥 「心強いだろ?」
 明日奈「でも、今度の相手は強敵ね」
 飛鳥 「大丈夫。ようやく、メンバーが揃ったんだから」
 明日香「あ、飛鳥君が強気だ……」

  次回、CONNECT20.『敗北の予感』

 飛鳥 「流石に手強いな……ハンデ付け過ぎたかもな……」

 明日香「次回は大ピンチ! 作戦失敗!?」
 明日奈「作戦? そんなのあったかしら?」
 飛鳥 「あるよ……チームなんだから……」
 蓮  「つーか、自信満々に勝てるって言ってなかったか、お前?」
 飛鳥 「いや、俺はそんな事言ってないけど」
 蓮  「何!?」
 明日奈「やっぱり馬鹿ね、あなたは」
 蓮  「…………(#゚Д゚)」



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