「第一ハッチ、第二ハッチ、第三ハッチ展開! 霊力機センデューオ、セレスアリサ、ブレイズレアル出撃どうぞ!」
『行けるな、イーヴァ?』
『はい。お願いします、ディーバ』
『ディバイスタン=ディアルーシェ、センデューオ出撃します!』
『行くわよ、リィナル! セレスアリサ、出るわよ!』
『了解。霊力機セレスアリサ、出撃します』
『アウル、出撃準備完了です!』
『よし。霊力機ブレイズレアル、出撃』
 イシュザルトのブリッジから、ソフィアのアナウンスに従って霊力機が出撃する。
 艦長席に座り、セレスティムが指示する。
「イシュザルトは王都の守備に! リュート、特殊フィールド展開並びに副砲展開!」
「了解! イシュザルト、特殊フィールド展開、副砲はエネルギー充填後、指示があるまで待機します!」






宿命の聖戦
〜THE FINAL LEGEND〜



第一部 希望と優しき心

美紗編
終章 光の継承


 王都を囲む城壁の外に、三体の霊力機が立つ。そして、迫り来る影を見た。
 巨大な爪を持つ腕が四本、コウモリのような翼、巨大な口を持った化け物――――グルヴァル・ゼイオ。
『グォォォオオオオオオッ!』
 咆哮を上げ、大地に降りる。その全貌を見てディーバ、フローレンス、アウルの三人が目を見開く。
「これが、グルヴァル・ゼイオ……!?」
「嘘でしょ? 霊力機の何倍大きいって言うのよ!?」
「計算で言えば、約四倍と言ったところか……」
 そう、グルヴァル・ゼイオは巨大だった。霊力機など軽く倒せそうなほどの巨体。
「……艦長達が苦戦するのも頷ける。初めて見たが、ゼイオはここまでデカイのか……!」
「私達で倒せれば良いけど……! とりあえず、どうする?」
「相手がゼイオでも戦い方は変えない。フローレンスは遠距離攻撃、ディーバは状況に応じて切り替え、俺は接近戦で行く」
「気をつけろよ、アウル」
「それは俺の台詞だ。レイザ、オルドアックスだ」
『了解、アウル! オルドアックス装備!』
 アウルの乗る霊力機ブレイズレアルが斧を手にして構える。
「まずは射撃で威嚇する。イーヴァ、頼む!」
『了解。ハザードヴェイル、クロウティアヴェイル準備完了です』
「リィナル、グラシエルブラスト! 最初からフルパワーで行くわよ!」
『了解、霊力機セレスアリサ、グラシエルブラスト発射態勢に入ります』
 続いて、ディーバの乗る霊力機センデューオは両手に銃を、フローレンスの霊力機セレスアリサが大砲を構える。
 準備万端。そう判断した三人が攻撃を仕掛ける。



 イシュザルトの格納庫。アランは霊力機の調整を急いでいた。
 後ろにいるアウィードに説明する。
「今戦っているグルヴァルって言うのは、この世界で最近迷惑な化け物だ」
「化け物?」
「そうだ。グルヴァルには複数の種類が存在していてな、爪と牙を発達させたグルヴァル・ゾレア。
 空が飛べるようになったグルヴァル・ゾレド。繁殖能力を持ったグルヴァル・ゼレブ。
 そして、ゾレアとゾレド二つの特性を持った最悪のグルヴァル・ゼイオだ」
「じゃあ、今戦っているのは……」
「一番最悪なグルヴァル・ゼイオ。ゼイオは、今戦っている奴らでも倒すのは無理だ。
 お前の親父……ロバートと一緒に戦ってた奴らが、どうにか戦って倒せる程度だからな」
「それって、今ヤバイんじゃ……」
 不安になるアウィードに、アランが調整している霊力機をコツンと叩く。
「だからこそ、この段階で戦力を増やす必要がある。ある程度の事を教えるつもりだったが、ぶっつけ本番で頼むぞ」
「え、もしかして……」
「お前には、こいつに乗ってもらう。安心しろ、こいつもスラフシステムが搭載してある」



 グルヴァル・ゼイオの強さは、ディーバ達三人の想像を圧倒的に超えていた。
「攻撃が通用しない……!」
「何なのよ、こいつ……!」
「硬いな……レイザ!」
『戦闘データ測定完了しました。霊力機の数倍はあります!』
 レイザの言葉に、三人が目を見開く。
 霊力機の数倍。つまりそれは、伝説の霊戦機と同じかそれ以上だと言う事だ。
『グォォォオオオオオオッ!』
 グルヴァル・ゼイオが咆哮を上げ、巨大な口にエネルギーを集中させる。
 そして放つ。巨大な口からビームが放たれた。
 放たれたビームが一直線に伸び、王都を守る城壁を突き破る。
『グォォォオオオオオオッ!』
「城壁を一撃で……!?」
『王都内の被害確認。あのビームの威力は、内部にまで及び模様です』
「そんな事言われてなくても、見れば分かる!」
 驚くフローレンス、リィナルの分析に声を上げるディーバ。グルヴァル・ゼイオが咆哮を上げ、翼を大きく広げる。
 そして飛び立つ。まるで、霊力機など敵ではないと言わんばかりに。
「逃がすか! イーヴァ、ヴェイルブラストモード!」
『了解。ハザードヴェイル、クロウティアヴェイル接続開始』
 二つの銃が前後に連結し、銃口が大きく広げられる。
『完了。ヴェイルブラスト、発射できます』
「よし……くらえっ!」
 エネルギーを集中して撃つ。一筋のビームが放たれた。
 飛び立つグルヴァル・ゼイオの翼に直撃する――――が、無駄だった。翼を撃ち抜くどころか、傷一つ付いていない。
『グォォォオオオオオオッ!』
 グルヴァル・ゼイオが空を飛び、王都へと向かう。



「艦長から話は聞いていたけれど、あそこまで硬いなんて……!」
 イシュザルトのブリッジで、空を飛ぶグルヴァル・ゼイオを見つつ、セレスティムが言う。
「リュート、副砲発射! 王都へは絶対に入らせないわよ!」
「了解! イシュザルト、副砲発射!」
 イシュザルトの側面の大砲からビームが発射される。グルヴァル・ゼイオがさらに空高くまで舞い上がった。
 副砲が避けられる。それを見たセレスティムが驚いた。
「避けられた!?」
『グォォォオオオオオオッ!』
 グルヴァル・ゼイオが口からビームを出す。イシュザルトの特殊フィールドが防いだ。
『特殊フィールド形成。被害無し』
「ミサイル用意!」
『了解』
 今度はミサイルが放たれる。グルヴァル・ゼイオはミサイルを回避し、ビームを再度放つ。
 セレスティムは焦っていた。イシュザルトの攻撃は全て回避され、命中しない為に。
『グォォォオオオオオオッ!』
 グルヴァル・ゼイオがイシュザルトをやり過ごす。
「逃がさないわよ! リュート!」
「了解! 多連装ビームキャノン、発射準備!」
『不能。グルヴァル・ゼイオ、射線外』
 イシュザルトが告げる。その言葉に、セレスティムが舌打ちした。



 アランの自宅を後にし、美紗は母やエルと共に避難する為走っていた。
 直後、鼓膜が破れんばかりの咆哮が上がる。
『グォォォオオオオオオッ!』
 グルヴァル・ゼイオが街中に降り立った。美紗の目が見開かされる。
 巨大な化け物。テレビや映画でしか見た事ないような化け物が視界に入っている。
「…………」
 足がすくみ、動けなくなる。母であるアリサが美紗に気付いた。
「美紗、どうしたの!?」
「お母さん……足が……」
『グォォォオオオオオオッ!』
 グルヴァル・ゼイオが咆哮を上げ、美紗達を捉える。巨大な腕が振り上げられた。
『グォォォオオオオオオッ!』
「美紗!」
「――――お父さん……!」
 振り下ろされる腕。美紗は目を閉じた。

 ――――少女よ、我が名を呼べ。

 瞬間、声が聞こえた。頭の中に響く声。

 ――――我が名を呼べ。父とかつて共に戦った友の名を。

「お父さんの……友達……?」

 ――――そう、我は少女の父のかつての友。

「…………」

 ――――我が名を呼べ。我が名は――――

「――――霊戦機ヴァトラス!」
 美紗がその名を呼ぶ。それを聞いたアリサは驚いた。
 グルヴァル・ゼイオの振り下ろされる腕が吹き飛ばされ、光の柱が昇る。

 光が消え、白銀と燃え盛るような赤熱、そして母なる海のような青の装甲を持った巨人が姿を見せる。

 かつて、”聖戦”と呼ばれる戦いを終わらせた巨人。誰もが願った平和へと導いた巨人。

 今、霊戦機ヴァトラスがここに目覚めた――――




宿命の聖戦
〜THE FINAL LEGEND〜

第一部 希望と優しき心

美紗編 完





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